発達障害と視覚優位

発達障害と視覚優位

発達障害の子は耳から聞こえる声や音の情報よりも、目から見える情報を優先したり理解がしやすいという特徴があります。これを『視覚優位』と言います。

ちなみに聞いた情報の処理が得意な場合『聴覚優位』、文字や文章を読んだ情報の処理が得意な場合は『言語優位』と言うことがあります。

視覚からの情報は「色」「大きさ」「距離」「形」「高さ」「個数」など多くの情報が一瞬で入ります。

たとえば家の窓から見えた景色を視覚から理解するのは容易ですが、これを言葉や文字にすると「道路が見えて、道路には車が3台走っていて、道路の反対にはコンビニエンスストアがあって、その隣には・・・」と、とても膨大な量になってしまいます。

これらの情報を言葉や文字で与えられても、全部理解するのは難しいですし、場合によっては最初の方に得た情報を忘れてしまうこともあります。特に発達障害の人は、言葉や文章の理解が難しかったり、物事を覚えて記憶に留めておくのが困難な事があります。

また、発達障害の人だけでなく、健常者の8割から9割が視覚優位だとされ、私たちが日常生活を送るうえでも視覚優位については理解しておく必要があります。

発達障害の子が視覚優位の理由

一般の人でも大多数が視覚優位だと言われていますが、発達障害の子はその障害特性から視覚のほうが優位になることも考えられます。

聴覚過敏

発達障害の子は感覚が非常に敏感になる『感覚過敏』という特徴を持っていることがあります。

味覚が過敏であると食べ物へのこだわりや偏食の原因になったり、触覚が過敏であると手を繋ぐのを嫌がったり服の肌触りや着心地が嫌で同じ服ばかりを着ているという事もあります。

発達障害の子の中には感覚過敏の中でも聴覚が非常に敏感になる『聴覚過敏』という特徴を持っている子が多く見られます。

聴覚過敏になると特定の音や声を嫌がったり、健常者が気がつかないような小さな音などにも過敏に反応する事があります。

この聴覚過敏があることで音への苦手意識や、音を嫌がるため、耳からの情報が入りにくいという事があります。

言葉や文字の理解

言葉や文字の理解が難しいのも発達障害の特徴のひとつになります。自閉症など知的障害を持つ子の場合には、単純に知的レベルの問題で言葉や文字を理解ができない事があります。

発達障害全般においては『言葉や文字でのコミュニケーション能力の困難』という大きな特徴があり、言葉や文字の理解だけでなく、会話の中での理解が難しかったり、相手の気持ちや感情を汲み取れないといったことがあり、言葉や文字での情報処理が苦手な場合があります。

学習障害の子の場合には文字の認識が困難であったり、単語のつながりや意味、表現などの理解が難しいため文字からの情報を受け取ることができなくなります。

言葉を上手に話したり読み書きが得意な子でも、言葉や文字を正しく理解していない事や、言葉を話せても基本は視覚優位だという場合があるので注意が必要です。

状況を想像ができない

さまざまな知識や経験が有ると言葉や文字からの情報で、その状況を想像し判断する事ができます。

発達障害の子の場合には、知識や経験が乏しい場合や、想像力の欠如の障害特性を持っていることもあります。そのため目で見た情報以外では状況を想像し理解する事ができない事があります。

放課後等デイサービスでの指導や療育に取り入れる

発達障害の子の多くは視覚優位であるため、放課後等デイサービスでの活動や指導や療育にも、この視覚優位の特性を取り入れて行いましょう。

お手本を見せる

作業や課題を行う際には口頭での説明や支持も必要ですが、お手本を見せるようにしましょう。お手本を見ることで実際に行うことがイメージしやすくなります。

お手本は指導員が行うだけでなく、上手に行えるお友達をお手本にするのも良いです。

手順書を作る

作業や課題などの際には上記のお手本だけでなく、絵や写真入りの手順書などを作って活用する方法もあります。

お手本の場合にはそのつど誰かにお手本をしてもらう必要が有りますが、画像入りの手順書なら必要になった度に見ることができますし、何度でも見直すことができます。

手順書は作業などだけではなく、手の洗い方、トイレの使い方、靴の履き方など日常生活の行動が難しい子にも使うことができます。

表などを用いる

予定やスケジュールなどを意識させるには、予定表などを使いましょう。

時間な行動の流れなどは目に見えない物で言葉での理解も難しくなりますが、目に見える形の予定表やスケジュール表を活用する事で、子供も今やるべきことや今後の流れの理解につながり見通しを持って行動する事ができます。

コミュニケーションカードを使う

発達障害の子供は言葉で人とのコミュニケーションを取るのが苦手な事があります。

このような場合には表情や行動内容などが絵で書かれたコミュニケーションカードや絵カードを使いましょう。

注意をする際や指示を入れる際にも具体的に絵や写真の入ったカードを使うと、子供たちの理解も深まります。

注意をする際にはバツ印のカードを提示したり、「いけません」「ダメです」などを表すカードや写真を見せると良いでしょう。

指示をする際にも次の活動内容の絵カードを提示したり、行動を促す絵カードや写真を用いります。また、選択のできる子には複数の絵カードを提示して選んでもらうという方法にも活用できます。

まとめ

発達障害の子供の多くは視覚優位であり、言葉や文字よりも目からの情報の方が理解しやすいです。しかし、理解力が優位であるというだけで、目からの情報を必ず理解できるというわけではありません。

大事なのは子供一人ひとりの特徴や発達段階に合わせて、子供本人が理解しやすい方法を取り入れてあげる事が重要です。