発達障害児の言葉の発達が遅れる理由と支援方法
発達障害児の言葉の発達が遅れる理由と支援方法
発達障害の子供は言葉の発達が遅れていることがあり、発語するのが遅かったり、言葉の意味の理解をするのが難しいことがあります。発達障害の中でも自閉症の場合にはこの特徴が大きく見られ、文部科学省の自閉症の定義のひとつにも「言葉の発達の遅れ」と記載されています。
正常な発達の子供の場合には、1歳半から2歳までには意味の有る言葉を発し始め、3歳になることには2語分程度が話せるようになります。しかし、発達障害の子供は、この年齢になっても喃語しか発しなかったり、場合によってはまったく言葉を話さないということもあります。
言葉の発達も遅れながら徐々に言葉が増える場合や、有る程度はしゃべれるようになっても語彙数が増えない場合もあり、人によっては生涯意味のある言葉を発しないということもあります。
発達障害児の言葉の発達が遅れる理由
発達障害の子供が言葉の習得に遅れが見られる理由には、その障害の特性などからさまざまな理由が考えられます。
他人への興味
子供は小さいときから周囲の人とコミュニケーションを取ろうとするために、人がしゃべる様子を聞いたり、自分から声を発して言葉を覚えようとします。
しかし、発達障害の子は他人への興味が無かったり、場合によっては他人の存在に気がついていないため、なかなか言葉を発したり言葉を覚えようとしないことがあります。
また、言葉などは聞こえていても人への関心が乏しいため、聞こえている言葉が近くの人が発している事や、コミュニケーションのために用いている事に気がつかない事もあります。
視覚優位のため
発達障害の子供は耳からの情報よりも目からの情報が優先的となる『視覚優位』の特徴を持っていることが多いです。
視覚優位であると、近くで人が喋っている言葉よりも目に見える物の方に注意力が向いてしまい、言葉への意識が少なくなってしまいます。
喋っている人の顔を見て話を聞いている様でも、その人の服装や装飾品、口の動きや目の動きなどに注意が向いており、話している内容は耳に入っていないということも多いです。
聞こえた情報の処理が難しい
人が話した言葉を理解するには、耳から聞いて、聞いた内容を頭で処理する必要が有ります。
言葉であると耳から聞いた際にその場で情報の処理をしなくてならず、聞き漏らしてしまったり、聞いた内容を忘れてしまうとそこで終わりになってしまいます。
発達障害の子は言葉を聞くことや、聞いた言葉を理解し処理する能力が乏しいため、言葉からの情報を受け取るのが難しくなります。
言葉はパターンが決まっていない
話し言葉にはパターンが決まっていないため、パターン化した物を好む発達障害の子には理解が難しいものになります。
例えば『空腹だ』と言うことを伝えたい場合にも「お腹減った」「何か食べたい」「食べ物無い?」など様々な言い方や表現方法があり、会話をする相手によって言い方は全く異なります。
また、話す相手によって声の質や話し方は変わるため、声の高さ低さ、声の大きさ、話すスピードなどにより、発達障害の子はまったく別の言葉だと感じ取ることもあります。
場合によっては同じ言葉でもお父さんとお母さんが言った言葉では別の言葉だと感じ取ったり、同じ人が喋っても場所や場面などの状況により全く別のものだと思うこともあります。
その他の理由
発達障害でも自閉症などの場合には知的障害が伴うこともあります。知的障害が重度であると言葉や会話の理解も困難が生じます。
耳の聞こえ方の問題、口の使い方や呼吸器官の問題などを抱えている場合もあります。全く音に反応しない場合、呼吸や咀嚼(そしゃく)などがおかしい場合、よだれが非常に多く口から垂れる場合などはそれぞれの専門医に相談する必要があります。
放課後等デイサービスでの支援
言葉の発達が遅れている子には、子供の発達段階や、どの部分で言葉への困難を抱えているかを判断しコミュニケーションを通して支援を行うことが必要になります。
コミュニケーションを多くとる
言葉での発語をするためには、コミュニケーションを取りたいという必要性を子供が感じなくては行けません。
そのため放課後等デイサービスの活動中には、出来るだけ多くの言葉がけを行い、コミュニケーションを取るようにしましょう。言葉がけと共に表情を用いて感情を表現したり、身振りやジェスチャー、視線なども同時に活用しましょう。
遊びの中でコミュニケーションをとるのも効果的です。自閉症などの発達障害の子は体を使った遊びや、刺激や感覚を得られる遊びが大好きです。これらの遊びを行う中で、コミュニケーションをとる事も発語へのきっかけの一つになります。
言葉が無かった子でも、保育園や幼稚園に入園したり、学校に入ってお友達が出来ることで、お友達の会話を真似して言葉を覚えることがあります。この様にコミュニケーションをとることは言葉を理解し習得する上で重要な要素になります。
単語を意識させる
物の名称、人の名前、状態など様々な単語を意識させることも重要です。
子供が何かに興味を示していたら「これは○○だよ」と名称を教えてあげたり、おやつの際には「おさら」「おはし」などと物と名称を結びつけたりして物の名前や単語を意識できるような声かけをします。
状況に応じて、数の大小、大きさ小ささ、長さ短さ、高さ低さ、暑さ寒さなど概念と言葉の繋がりを意識できるようにしてあげましょう。
単語を意識させるには絵カードを使ったり、子供が興味を持つ絵本や図鑑などを用いて名称と単語をマッチングさせるのも効果的です。
2語分を意識させる
有る程度単語が出るようになったら、文法や2語分を意識させるような声賭けを行いましょう。
言葉に遅れのある子の場合2語分は難しいものになります。おやつを食べたいときでも「おやつ」しか言わなかったり、トイレに行きたいときも「トイレ」しか発しないことも多いです。
このような際には1語分ずつでいいので「おやつ」の後に「ください」や「たべたい」という言葉を、「トイレ」の後には「いきたい」「いきます」などの言葉を1語分ずつ区切ってもよいので、続けて言うように促し、徐々に2語分での発語が出来るように促してあげましょう。
子供の気持ちをキャッチする
発語が無い子は自分から人にアピールすることは少なくなってしまいますが、何らかの発信が有ったらすかさずキャッチして返してあげましょう。
職員と目が合ったら笑顔で名前を呼びかけてあげたり、何か声を出したら同じように声を出して、自分の意思表示で相手が反応するということや、コミュニケーションを取る経験を増やします。
これを続けることで他人への意識や、自分からの発信が相手に届くということを意識させ、発語へのコミュニケーションに繋げていきましょう。
まとめ
発達障害児はその障害特性や特徴から、言葉への意識や理解が遅れることがあります。言葉の遅れも人それぞれで、最初は遅れていても成長するにあたって言葉を喋るようになったり、発語数が増えることもあります。
放課後等デイサービスでは、子供がどの部分で言葉の理解や発語への困難を抱えているかを判断し、活動の中の支援や遊びを用いてコミュニケーションを増やし、発語へのきっかけを作ってあげましょう。