感覚が鈍くなる感覚鈍麻の子供への放課後等デイサービスにおける支援

感覚が鈍くなる感覚鈍麻の子供への放課後等デイサービスにおける支援

発達障害の子供は健常者とは感覚の感じ方や受け取り方が異なることがあります。

感覚の感じ方が非常に敏感だと『感覚過敏』と呼ばれ、逆に感じ方が鈍くなると『感覚鈍麻』と呼ばれます。

感覚鈍麻になると痛み、暑さや寒さ、体の動きなど、様々な感覚が鈍くなってしまい、行動や生活に問題が生じる事もあります。感覚鈍麻はすべての発達障害の子に見られるものではありませんが、複数の感覚が鈍くなったり、場合によっては一方の感覚は過敏でも、別の感覚は鈍いという事もあります。

感覚鈍麻の例

発達障害の子供の感覚鈍麻には、主に以下のものが見られることが多いです。

痛みに強い

怪我などをしても感じなかったり、痛みに気がつかないということもあります。

痛みに対して鈍感であると、怪我をしてもすぐに処置ができない、病気などで気がついた時には重い状況になっていたということに繋がりかねないので注意が必要です。

暑さ寒さに強い

暑さや寒さを感じにくく、夏場でも長袖長ズボンだったり、寒くても薄着でいるということもあります。

なお、衣服に関しては感覚の問題ではなく、こだわりの問題で着替える事ができないという場合も多いです。

暑さや寒さが分かりにくい子の場合には、温度計などを使用して何度以上なら半そで、何度以下なら上着を着るといったルールを作るのも効果があります。

目が回りにくい

自分の体の傾きを感じ取る平衡感覚が鈍くなる事で、目が回りにくくなります。

自閉症の子供は目が回りにくいと言われるのも、感覚鈍麻の特性のため平行感覚が鈍くなっているのが大きな理由のひとつです。

目が回らないのは一見メリットの様でもありますが、平衡感覚が鈍くなるので自分の体の傾きがわからず、姿勢を保持できなくなったり、真っ直ぐに歩くのが難しくなるなどの弊害があります。

人や物にぶつかる

距離感が鈍くなると自分と対象物の間を感じ取るのが難しくなり、人や物にぶつかりやすくなります。

固有感覚が鈍くなることで自分の体の位置や動きの把握の困難、平衡感覚の影響で体のバランスが崩れる影響から、人や物にぶつかりやすくなる事もあります。

疲れが分からない

様々な感覚が鈍くなると自分の疲れを感じることができず、気がついたらエネルギーが無くなり動けなくなってしまったり、精神的に参ってしまうという事もあります。

発達障害の子には『過集中』という、好きなことや興味のある事に対して過度に集中してしまうという特徴を持っていることも有るので、物事にのめり込みすぎている場合には注意が必要です。

呼ばれても振り向かない

聴覚の鈍麻により音が聞こえにくかったり、視覚の鈍麻から周囲の人に気がつかなかったりすると、人から呼ばれも全く反応しなかったり、自分が呼ばれている事が分からないという場合もあります。

姿勢が崩れる

平衡感覚が鈍くなることで体が傾いているのに気がつかなかったり、筋肉や関節の動きを感じる固有感覚が鈍いことで体の動きや位置を調節するのが難しくなり、姿勢が崩れることがあります。

不器用

体の動きを調整する固有感覚が鈍くなることや、複数の部位の動きを調整する感覚が鈍くなることで、動きがぎこちない不器用と呼ばれる状態になることがあります。

体の動きに関係する感覚が鈍くなると、物を投げたり飛び跳ねるといった全身の動きである『粗大運動』がぎこちなくなったり、文字を書いたりお箸を使ったりといった主に手や指先などの動きである『微細運動』が苦手になったりします。

自傷行為

発達障害の子は時折、自分の体を傷つける「自傷行為」を行うことがあります。自傷行為を行う理由には、ストレスや不安、パニック、外部刺激を得る、遊びの一環など様々なものがあります。

触覚や痛みに対する感覚が鈍いと、腫れたり出血するほど自分を傷つけても痛いと感じない事があり、中にはニコニコしながら爪を毟るような子もいます。

また、自己刺激を得ている場合には、感覚に耐性が付いたり、刺激を与えてる部分がタコのように硬くなってしまい刺激を受け取りにくくなるため、より強い刺激を求めて激しい自傷行為につながる事もあります。

字が下手

固有感覚などが鈍くなると、スムーズに手を動かすことができず、文字の線を書いた際に綺麗に線を引いたり、止めることが難しく字のバランスが崩れてしまいます。

力の入れ具合の感覚が鈍いと、鉛筆の芯をすぐに折ってしまったり、ペン先を潰してしまったり、消しゴムをかける際に紙を破いてしまうということがあります。

偏食

食べ物の好き嫌いにも感覚鈍麻が関連している場合があります。

味覚が鈍いと味を感じにくいため、味の濃い食べ物や辛い食べ物を好んだり、歯ごたえのある硬い食べ物を好む事があります。

嗅覚が鈍いと風味にも影響が出てくるので、偏食の原因にもなります。

感覚探求行動

発達障害の子は感覚鈍麻だけでなく活動の範囲が狭いことが多く、日常の生活や遊びの中では欲しい刺激を得ることができません。そのため好きな刺激を求めたり、新たな刺激を求めて様々な行動(感覚探求行動)を取ることがあります。

感覚探求行動にはトランポリンやバランスボールで飽きずに長時間飛び跳ねる、普段の行動よりもより激しく動き回る、水や砂などを長時間触っているなどの物があります。

体を揺らす、手をパチパチ叩く、手をひらひらさせる、同じ場所でぐるぐる回るといった『常同行動』を取ることもあります。なお『常同行動』は『感覚探求行動』以外にも気持ちを落ち着かせたり、ストレスの発散などに行われることもあります。 

感覚探求行動を行う子供の中には、普段受ける刺激が弱いために、より強い刺激を得ようとすることもあり、高いところに登ったり、飛び降りたりと危険な行為に結びつくこともあります。

自分の爪をむしったり、頭や顔を叩いたり、頭を壁や床などに打ち付ける自傷行為に取られる行動取ることもあります。自傷行為にはストレスやパニックなど様々な原因もあるので、どのようなタイミングに何の目的で行っているのかを見極めて対応する必要があります。

感覚鈍麻ではない場合も

痛みに強い子や、暑さ寒さにも動じない子でも、その原因が感覚鈍麻でない場合もあります。

発達障害の子は痛みなどの不調を感じていても、情報を処理して自分の状況を判断するのに時間がかかったり、感じた痛みに対してどのように対応してよいか分からず、我慢をしてしまう事もあります。

対応に関してもコミュニケーション能力の問題から他人に自分の状況を伝えることが難しい場合、どの程度の痛みだと人に伝えた方がよいのか判断できない、他の人に伝えるのが恥ずかしいと思っている場合など様々な理由が有ります。

感覚鈍麻のある子への対応

感覚鈍麻の特徴がある子に対して、放課後等デイサービスではどのような対応方法や支援方法が有るか紹介します。

子供の状態や特性を理解する

子供を支援するためにはまず、子供の状態や特性など必要な情報を整理し、理解する必要があります。

子供の苦手な面や不得意な面だけでなく、得意なことや上手にできることなども把握して支援に取り入れます。

感覚に関しては鈍い感覚とともに、敏感な感覚も把握しましょう。基本的に発達障害の子は複数の感覚の問題を併せ持っていることが多いです。感覚からの問題でパニックや自傷行為や他害行為などの問題行動と取られる行動に繋がることも多いので、特に注意が必要です。

感覚刺激遊びを行う

感覚が乏しい場合や、感覚を欲している子の場合には、様々な感覚刺激を与える遊びや運動を提供するとよいでしょう。

感覚を欲して落ち着きが無かったり、感覚探求行動が見られる場合には、遊びや療育の中で好きな感覚を取り入れる物を行ったり、子供が触って落ち着くようなものを手渡してあげましょう。

職員が注意し見守りや声かけを行う

痛み体調不良を感じにくい子の場合には、怪我や病気をしていても分からず、時間がたってから痣や腫れなどに気がついたり、家に帰宅してから体調が悪くなるという事もあります。

これらの事が無いように放課後等デイサービスの職員は、感覚鈍麻のある子を含め、子供の行動の様子を注意して見守る必要があります。

放課後等デイサービス来所時には検温などのバイタルチェックを行ったり、学校の先生からの引継ぎや、ご家庭からの連絡帳の記載内容をしっかりと確認するようにしましょう。

活動時に普段と違う動きをしている、いつもと比べて大人しい、元気が無いなどの様子が見られたら、そのつど子供の様子や体調を確認するようにしましょう。

各種感覚の訓練を行う

平衡感覚や固有感覚や触覚などが乏しい場合には、それぞれのトレーニングを行ったり、複数の感覚を組み合わせた『感覚統合療法』を取り入れるようにしましょう。

これらの訓練には専門的な面も多いので、作業療法士(OT)の資格を持った職員や、外部の作業療法士を招いて行う必要もあります。

苦手な面がはっきりしている場合には保護者との相談のうえ、放課後等デイサービスの活動や支援、療育の中で、マッサージや体の動かし方のトレーニングなどを行いましょう

まとめ

発達障害の子供は感覚が鈍くなる『感覚鈍麻』という特徴を持っている場合があります。
子供によっては複数の感覚が鈍くなっていたり、別の刺激には過敏という場合もあるので、子供の苦手な感覚や好きな感覚、感じにくい刺激などを確認し意識しておきましょう。

感覚鈍麻の子供の支援を放課後等デイサービスで行う際には、子供一人ひとりの特徴や特性を把握し、子供の様子を常に注意する必要があります。

また、感覚はそのときの体調や気分やストレスなどにより、大きく変化するのでメンタルや疲れの様子にも配慮してあげましょう。