発達障害の子は姿勢の保持が難しい

発達障害の子は姿勢の保持が難しい

自閉症などの発達障害の子は、背筋を正した良い姿勢で椅子に座っているのが難しかったり、気をつけの姿勢を取っていることが困難なことがあります。

一見だらしない座り方や立ち方で、行儀が悪いように見えても、子供にとってはしっかりと姿勢を正しているつもりであったり、その姿勢を保持できるようにがんばっている場合があります。

放課後等デイサービスの活動でも、椅子に座っている際に猫背になる、お尻が滑って浅く座ってしまう、胡坐(あぐら)をかく、膝を立てる、背もたれを掴む、場合によっては直ぐに椅子から降りて横になってしまう事があります。

立っている際にも体がゆらゆら動く、その場で静止できずふらふらと歩いてしまう、一箇所でとどまっていられず動きまわってしまうという子供も多いと思います。

発達障害の子の姿勢が崩れる理由

発達障害の子が姿勢を崩してしまう理由には、その子の特徴や特性などにより様々な理由が考えられます。

筋力や体幹が弱いため

筋肉の発達や体幹が弱いのも発達障害の子の特徴のひとつです。筋力や体幹が弱いと体を支えたり、同じ姿勢を取り続けるのが困難になります。

逆に適度に筋肉を弱めたりするのも苦手で、常に力を入れすぎてしまい筋肉が緊張したり、力を入れ続けているために疲れてしまい姿勢が保持できないという場合もあります。

多動のため

発達障害の中でも注意欠陥・多動性障害(ADHD)のように、多動の特徴が強い子の場合には、同じ姿勢を取り続けるのが難しかったり、一箇所にとどまっているのが困難な場合があります。

多動の特徴があると座っていても体がソワソワと動いてしまったり、その場にとどまっていることができずに立ち歩いてしまうという事が有ります。

常同行動を取るため

発達障害の子は不安やストレスを感じている際や、気持ちを落ち着かせるために『常同行動』という動きをすることがあります。

『常同行動』とは、体を前後に揺らしたり、手をひらひらさせたりと、自分の好む動きや刺激を得る行動を繰り返すものです。

着座や姿勢を正す時にストレスを感じたり自分を安定させようとする際に『常同行動』を行い、結果として体が動いてしまい正しい姿勢をとることができない場合があります。

正しい姿勢がわからない

正しい姿勢がわからないために、綺麗な姿勢をとることができない場合があります。

特に発達障害の子は「きちんと座りなさい」「姿勢を正して」などと言葉で言われても、何が「きちんと」や「正して」なのかが分からないことも有ります。

姿勢の理解ができない場合には、お手本を見せたり、正しい姿勢の形を指導してあげる必要があります。

自分の格好がわからないため

体の部位を調整する固有感覚の鈍さから自分の体のパーツの位置がわからなかったり、自分の格好や状態を第三者目線で想像するのが苦手です。

そのため、現在の自分の格好がわからず姿勢が崩れてしまう事があります。

感覚過敏から

発達障害の子は様々な感覚が非常に敏感となる『感覚過敏』という特徴を持っていることがあります。

触覚が過敏であると椅子に座った際に座面の感覚が不快と感じ、正しくお尻や背中を付けることを嫌がる場合があります。

放課後等デイサービスでの対処方法

正しい姿勢を取ったり姿勢の保持が難しい子に対し、放課後等デイサービスの活動の中で行える代表的な支援方法を紹介します。

体を使った療育や遊びを増やす

発達障害の子は筋肉の発達の弱さや、体を動かす感覚の問題から、姿勢保持だけではなく様々な日常動作がぎこちなかったり、影響が出ている場合があります。

体幹の弱さ、筋肉の弱さ、体を動かす感覚が弱いことで、姿勢を保持することができない場合には、放課後等デイサービスの活動の中で全身の筋肉を使う遊びや療育を取り入れるようにしましょう。

室内であればトランポリンやバランスボール、サーキットトレーニングなど。野外であればジャングルジムや滑り台などの遊具、追いかけっこなどが簡単に行える全身の運動になります。

また、弱い部分がハッキリしている場合には、医師や各種療法士のアドバイスを元に、その部位のトレーニングやマッサージなどを取り入れましょう。

姿勢を保持する時間を決める

姿勢の保持が難しい子に放課後等デイサービスの活動時間中、正しい姿勢で居ることは辛く困難です。しかし、全ての時間で好きな格好で居てもらうのも、姿勢を正す練習になりません。

そのため「始まりの会」「終わりの会」「机上のトレーニングの5分間だけ」など正しい姿勢を取る時間を作ることも重要です。

正しい姿勢を保持する時間は子供本人が無理なく行えるような時間を設定し、慣れてきたら徐々に時間を増やしたり、回数を多くするようにしましょう。

きめられた姿勢を保持する時間の最中は、姿勢が崩れてしまったら指導員が声をかけたり、正しい姿勢を保持できるように促してあげましょう。

姿勢を保持しやすい環境を作る

子供が姿勢を保持できないのには、環境が合っていないという事もあります。

着座の場合なら、椅子のサイズが合っていなかったり、椅子の感触が不快であったり、机の高さが合っていなかったり。立つ姿勢で有れば何処に立てば良いのかわからない、人や物が多いと気がそれて集中できないなどの理由が考えられます

環境が合っていない場合には、子供に合ったサイズ、高さ、幅、感触などの物を用意してあげましょう。また、補助用の座面やクッションを用意したり、しっかりと床に足が着くように足置き台なども効果的です。

立って姿勢を保持する練習の場合には、足元に目印をつけたり、自分の姿勢がわかるように鏡の前で行うなどの対処方法があります。

まとめ

発達障害の子は様々な理由から、正しい姿勢を取ったり姿勢の保持が難しい事があります。

正しい姿勢が取れないと周囲から行儀が悪いと思われるだけでなく、本人の体の負担が増えてしまったり、授業などでは姿勢の保持に意識が向いてしまい授業に身が入らないということもあります。

放課後等デイサービスでは、子供本人の特徴や特性、どの面で姿勢の保持が困難かを見極め、適切な指導や支援を行うことが重要になります。