表情を読み取るのが苦手な子供への放課後等デイサービスにおける支援方法
表情を読み取るのが苦手な発達障害の子供への放課後等デイサービスにおける支援方法
発達障害の子は人の表情を読み取るのが苦手という特徴があります。
そのために、人の表情から相手の感情や状況を読み取ることができず、状況に合わない態度をとったり会話をしてしまったり、場合によっては相手を怒らせてしまうこともあります。
相手を怒らせてしまった場合も、なぜ相手が怒ってしまったのかがわからず、悩んでしまう場合もあります。
表情を読み取ることは相手との円滑なコミュニケーションを築く上で重要なことになります。
発達障害の子供が表情を読み取るのが苦手な理由
自閉症などの発達障害の子供は、その特徴など様々な理由から、人を意識したり人の表情を読み取るのが苦手です。
人に関心が無い
発達障害の子供は他人に関心が持てなかったり、他人からの視線に注意が向かないということがあります。
このような場合には、相手の表情や様子に着目することは難しいですし、相手に感情や気持ちがあるということ自体を理解していない事もあります。
顔を合わせられない
子供によっては顔を見ながら会話をするのが難しいこともあります。
まず、相手の目を見て良いのかが分からなかったり、顔を合わせる事を『怖い』と感じたり『恥ずかしい』と思い、とてもストレスを感じることがあります。
発達障害の人は複数のことを同時にこなす事を苦手とすることが多いです。会話の場合にも『顔を合わせ表情を読む』『会話を聞く』『話の内容を理解する』『適切な返答をする』と複数のことを同時にこなさなくてはいけません。
このような場合には一番情報が入る会話の内容を聞く事に意識が集中するため、相手の顔を見たり表情を理解することが難しくなる事もあります。
細かいパーツで着目してしまう
発達障害の人は細かいパーツに注意が向いてしまうという特徴があります。
人と対面した際でも目だけ、口だけというように細かいパーツに着目してしまうため、複数の顔のパーツを使い顔全体で表現される表情の理解が難しくなってしまいます。
また、会話をしている際には、顔以外の服装や装飾品などに興味が向いてしまったり、相手の背後の物などに意識が集中する事もあります。
独自の解釈をしてしまう
様々な面で独自の解釈や理解をしてしまう特徴も発達障害には見られます。
表情を独自の解釈してしまう理由には、自分自身が様々な感情の理解ができない、理解できる部分でしか判断しないなどがあります。
発達障害の子は自分自身の感情を理解できない事も多く、自分の気持ちの表現や処理ができずにパニックを起こしたり、問題行動と取られる事をしてしまうこともあります。
全体の状況や複数の要因を合わせて考えるということも苦手であるため、自分で理解できる部分のみで表情や感情を判断してしまうこともあります。
上の項目で出た「細かいパーツで着目してしまう」のように、目しか着目できない場合には、目が開いているから「怒っている」、目が閉じているから「悲しんでいる」などのように判断してしまうことがあります。
放課後等デイサービスでの支援方法
人の表情を読み取るのが苦手な子に対しては、放課後等デイサービスでもその子に応じて支援やフォローを行いましょう。
表情カードを用いる
放課後等デイサービスで相手の表情を理解する練習をするのには、表情カードを用いるのが便利です。
表情カードを用いることで、さまざまな表情の種類の理解とその気持ちのマッチングを行うことができます。
まずは、カードの表情からそのときの気持ちの推測を行い理解ができるようにします。表情カードの絵を見て気持ちが理解できるようになったら、それぞれの場面を再現した状態や実際の会話などで用いて表情と気持ちのマッチングを行います。
発達障害の子の中には自分の気持ちを適切に表現できない子もいます。そのような子の気持ちや感情表現の理解にも役立つので、放課後等デイサービスに表情カードは用意しておきましょう。
相手の気持ちを代弁する
表情から相手の気持ちを理解することが難しい場合には、職員が間に入り「A君はおもちゃを取られて怒っているんだよ」「Bさんは貴方と遊べて喜んでいるよ」など、理解できるように気持ちを代弁してあげることも重要です。
特にお友達同士とトラブルになってしまった際には、お互いの気持ちを汲み取って代弁し、双方が相手がどう感じていたかを理解してもらいましょう。
相手の気持ちとしての理解が難しい場合には、「相手はこう思ってるけど、自分だったらどう思う?」と、相手を自分の立場に置き換えると、分かる事もあります。
絵本や紙芝居を用いる
活動の中で絵本や紙芝居を読む際に、登場人物の気持ちが表現されるシーンにおいて「どうして笑っているのかな?」「なんで怒っていると思う?」など、問いかけ気持ちを考えてもらうという方法も効果的です。
この際には様々な子に聞いてみて「僕は○○だと思う」「私は□□と感じた」など、いろいろな考え方や気持ちの感じ取り方があることを理解してもらいましょう。
また、明らかに間違った気持ちの感じ取り方をしていた子がいたとしても、否定をせずにひとつの考え方として受け取り、再度場面の説明やヒントなどを出して正解に近い感情への理解につなげてあげましょう。
表情の判断要素を教える
表情は顔の複数のパーツを用いて表現されます。
顔の細かいパーツのみに着目してしまう子の場合には目、口、鼻だけではなく、眉毛、口元のシワ、目や口の開き具合など複数の要素があることを教え、表情のパターンや判断条件を増やせるように支援しましょう。
目線を合わせるルールを知らない場合も
人と会話をする際には、適度に相手に目線を合わせるという暗黙のルールを知らないという場合もあります。このような場合には相手の顔を見たり、視線を適度に合わせるということを教えてあげましょう。
この際に目線を合わせることだけを教えてしまうと、相手の目をずーっと見つめ続け、威圧してしまうような態度になってしまうこともあるので、適度に目線を外したりすることも伝えましょう。
なお、子供の中には相手と目線を合わせることに恐怖を抱いたり、顔を見ると極度に緊張したりストレスを感じてしまう場合もあるので、それぞれの子に応じて支援をしましょう。
まとめ
発達障害の子供はその障害の特性から、様々な理由で人の表情を読み取り理解することが苦手です。
表情の理解が難しい場合には、その子がどの部分での理解につまづいているのかを見極めて適切な支援を行いましょう。
また、表情を読み取るのはコミュニケーションで養われる部分でもあります。コミュニケーションが苦手な子も多いので、人とのかかわり方を通して、教えていく必要があります。