人の話を聞き取りにくい子への放課後等デイサービスでの支援や対処方法
人の話を聞き取りにくい子への放課後等デイサービスでの支援や対処方法
自閉症などの発達障害の子は、物事への集中力や外部からの情報の受け取り方などの特性から、人の話を聞き取りにくいことがあります。
人の話を聞くことはコミュニケーションをとるための基本であるとともに、社会で生活するうえや対人関係を育むためにも基本的なことになります。
では、放課後等デイサービスでは人の話を聞き取りにくい子に対し、どのような支援や対処を行えばよいのか紹介します。
発達障害の子が人の話が聞き取りにくい理由
発達障害の子が人の話を聞き取りにくいのには、その特性などから様々な理由が考えられます。
話に興味が持てない
話の内容に興味を持てない場合、話に意識を向けることが出来ず、話が耳に入らないということがあります。
特に学校や放課後等デイサービスの話は、勉強の事や何かの指示の話で有ることが多いため、興味を持てず話に意識することが難しくなります。
子供の知的能力や発達の段階から、話の内容が難しく理解が出来ないと言うこともあります。
話に集中できない
ADHD(注意欠陥・多動性障害)などの子の場合には、人が話していても話に集中できず、結果として話が耳に入っていないということもあります。
学校や放課後等デイサービスでは、教室の掲示物、お友達の様子、窓の外の景色などに気を取られ話に集中するのが難しくなりがちです。
また、目に見えるものだけでなく『好きなゲームやアニメの事』『今日の給食やおやつのこと』『家に帰ってから遊ぶこと』などを考えていたり、発達障害児特有の妄想や想像の世界で楽しみ話に集中できないこともあります。
記憶力の問題
発達障害の子はワーキングメモリと呼ばれる、一時的な記憶力が弱い特徴を持つ場合があります。
ワーキングメモリが弱いと、話しの内容を記憶するのが難しくなります。その結果話の途中を忘れてしまったり、忘れた部分を自分で補完し、話した内容とは違うことを記憶してしまうという事もあります。
聴覚過敏から
発達障害の子には様々な感覚がとても敏感になる『感覚過敏』という特徴があります。感覚過敏の中でも聴覚が敏感な『聴覚過敏』だと、声や音を聞き取り難くなることがあります。
聴覚過敏であると特定の音を嫌がったり、小さな音が大きく聞こえたりします。周囲の音が全て耳に入ってくることもあり、話している人の声だけを聞き取ることが難しい場合もあります。
また、女性の高い声、小さめな声、早口な声、極端に低い声なども聞き取りにくくなる事もあります。
聴覚の問題
聴覚からの認知力が低いと、耳から声が聞こえていても、それを意識し内容を聞き取る事が難しくなる場合があります。
疾病や身体に障害を持っている子の場合には、聴覚にも影響が出ていることもあります。
ごく稀な例ですが、耳垢がたまり過ぎて声が聞き取りにくかったという子もいます。発達障害の子は感覚過敏などから耳が敏感で、触られるのを嫌うことがあり、耳掃除もなかなかできず耳垢が溜まりやすくなる事もあります。
人の話を聞き取りにくい子への放課後等デイサービスでの支援や対処方法
話を聞き取るのが難しい子供対して、放課後等デイサービスではどのような支援や対処が行えるのか代表的な内容を紹介します。
言葉以外でも伝える
発達障害の子の多くは、聴覚からの情報よりも視覚からの情報の方が理解しやすい『視覚優位』という特徴を持っています。そのため情報を伝える際には、言葉だけでなく目で見て分かる方法も取り入れましょう。
黒板やホワイトボードがある場合には、重要な事を書き出したり、絵カードや写真などを表示してあげるとよいでしょう。
ワーキングメモリの記憶力などの問題で物事を覚えているのが難しい子の場合でも、文字で書き出したり写真を貼っておくことで、一度忘れても見直して再確認することが出来ます。
興味を引くような話し方をする
子供が話しに興味を示さない場合には、子供の興味を引くような話し方をしましょう。
例えば、言葉に強弱や抑揚をつけて話したり、オーバーアクションなどを入れましょう。特に体の動きが入ったオーバーアクションは子供の興味を引きやすくなります。
子供が特定の物事に興味を示す場合には、例え話でその話題使ったり、興味の有る事に状況を置き換えて話してみましょう。
簡潔に話す
一回の話が長いと内容を覚えられなかったり、話の内容を理解するのが難しいことがあります。そのため、重要な事を完結に話すようにしましょう。
説明などをする際には、長い説明は避けて1回の話で1つの事を伝え、それが理解できたら次のことを伝えるようにします。
指示を出すときも1度の話しで1つの指示を伝えるようにしましょう。
知能の発達状況や理解力などから話の内容が難しいと思われる場合には、子供が理解できるように簡単に説明することも重要です。
集中できる環境を作る
注意力の問題から話を聞くのに集中が難しい子の場合には、集中できる環境を作るのも重要です。
放課後等デイサービスでは目に入る位置に興味を引きそうな掲示物を隠したり、絵本や玩具や療育ツールなどは目に入らない場所にしまいます。
外の景色などに注意が向いてしまう場合には窓にカーテンを設置したい、窓を背にして座ってもらいましょう。
感覚過敏など外部からの刺激で集中できない場合には、静かな部屋で話をしたり個室などで対応するようにしましょう。また、光などを眩しいと感じる子には蛍光灯などの設定やカーテンなどで日光の量を調節してあげましょう。
個別に対応をする
室内などで集団に対して説明などをする際には、定期的に声をかけたり肩を軽くたたいてあげ話に意識が向くようにします。
一通り集団への話が終わった後に、個別に声をかけて話が分かったかを確認したり、個別に説明をして話が理解できたかを確かめても良いでしょう。
集団で説明をする際には、話しに集中しやすいように前のほうに座らせたり、話者の近くの座席にするなどの対応をします。近くのお友達に話しかけたりちょっかいを出してしまうような場合には、周囲のお友達の座る位置などにも配慮しましょう。
話を聞き取る活動を取り入れる
放課後等デイサービスの活動の中で、人の話を聞き取る練習を取り入れるのもよいでしょう。簡単なものでは絵本の読み聞かせや紙芝居などがあります。
読み聞かせでは子供が興味を示すものを題材にした本を使うことで、子供本人が話を聞きこうとするので、聞き取りの訓練として行うことができます。
集団活動の一環としてクイズ、カルタやカード取りなどを行うのも、聞き取りの練習になります。
聞き取れなかった際の対処方法を教える
話が聞き取れなかった際に、どうしたらよいか分からず、そのままにしてしまうという場合もあります。
周囲の人が、話が聞き取れて居なかったことを感じ取ってフォローできればよいのですが、見過ごされると話が理解できないまま先に進んでしまい、子供本人が余計に分からないままとなってしまいます。
子供が話を聞き取れなかった際には「聞こえませんでした」「もう一度お願いします」などを言うように伝えて、子供本人が対処が取れるようにしてあげましょう。言葉で言うのが難しい子のばあには「おねがい」のサインを出すことを教えたり、絵カードなどを使って意思を表示する方法を教えてあげましょう。
まとめ
発達障害の子はその特性などから人の話を聞くことが難しいことがあります。
放課後等デイサービスにおいては、その子一人ひとりの特性を確認し、どの部分で人の話しを聞き取る事が難しいのかを判断する必要があります。
その上で子供が難しいと感じていることへのフォローや支援が重要になります。