放課後等デイサービスと学校の連携方法
放課後等デイサービスと学校の連携方法
学齢期の子供の能力向上を目的とした放課後等デイサービスでの活動は、学校の教育内容との連携が重要になります。
それぞれが別々な事を行ってしまうと、意味がないばかりか逆効果になってしまうだけでなく、何より子供本人が混乱してしまう事になります。
実際に放課後等デイサービスガイドラインでは『学校との連携』の項目が作られており、具体的に何を行うべきか書かれています。
文部科学省も自治体を介して特別支援学校や支援クラスの有る学校に通達を出しており、特別支援教育と放課後等デイサービスの活動の連携が重要視されています。
文部科学省:「放課後等デイサービスガイドライン」にかかる普及啓発の推進について
では、放課後等デイサービスと各学校はどのように連携や情報共有等を行えば良いのかまとめてみました。
放課後等デイサービスガイドラインでの学校連携
放課後等デイサービスガイドラインでは『施設者・管理者向け』と『児童発達支援管理責任者向け』に以下の内容で学校連携の方法が記載されています。
施設者・管理者向け
- 学校との役割分担を明確にし、連携を積極的に図る。
- 年間計画や行事予定の交換、下校時刻の確認、引継ぎ等、学校と情報を共有する。
- 学校送迎時の安全確保と、ルールなどの事前調整。
- 下校時のトラブルや、病気・事故の際の連絡体制。
- 保護者の同意を得ての学校の教育支援計画の情報提供を受ける。
- 行事や授業参観などへの参加。
児童発達支援管理責任者向け
- 子供の支援を行う上で、学校との役割分担を明確にし、連帯を図る。
- 保護者の同意を得ての学校の教育支援計画の情報提供を受けるとともに、放課後等デイサービスの利用計画を提供する。
- 行事や授業参観などへの参加。
- 子供の教育支援計画の理解と、学校で考慮されている事への情報を得て、従業者にも理解の徹底を図る。
- サービス担当者会議や学校との連絡会議などを開催し会議の場を設ける。
- 年間計画や行事予定の交換、下校時刻の確認、引継ぎ等、学校と情報を共有する。
- 子供の送迎のルールの作成や、送り出しの協力、従業者の身分照明などを徹底。
- 下校時のトラブルや、病気・事故の際の連絡体制。
- 医療的ケアや気になる事などの情報を、保護者同意のもと連絡ノートなどを作成し情報共有を行う。
厚生労働省:放課後等デイサービスガイドライン
学校との役割分担
学校との役割分担は明確的に決めるのは難しいと思いますが、放課後等デイサービス本来の目的である、授業後の放課後や学校休業日に活動や余暇の提供、生活能力向上の療育や訓練、創作活動や作業活動の実施、地域社会との交流の提供を行う事を意識する事だと思います。
学校では行わないような活動を無理にしなくても、放課後等デイサービスに通う他の学校や異年齢の子供たちとの遊びやコミュニケーションの場を提供するだけでも、意義はあると思っています。
学校との情報共有
学校との情報共有方法もその学校や地域などにより様々あると思います。
『学校便り』『学校の年間計画や行事計画表』『その他通知』を受け取り、学校の行事予定や活動内容を知ることは重要です。
子供は学校でイベントがあると気持ちが不安定になったり、ストレスを抱えることが多くなります。特に運動会や学園祭などの練習や準備が始まると、子供の様子が普段と違うことが多く見られ、放課後等デイサービスの活動にも影響が出ることがあります。
そのため事前に学校の行事やイベントなどは把握しておくと、子供のためにも良いでしょう。
インフルエンザなど流行性の病気が流行っている場合には、欠席状況や学級閉鎖の様子を確認したり、台風や降雪などが予想される場合には、学校の有無や下校時間なども確認しておくことが必要になります。
学校送迎時の引継ぎ
学校送迎時には担任の先生からしっかりと子供を引き受け、その日の健康状態、学校での様子、特記事項などを確認します。特にストレスや不安を感じやすくパニックなどに繋がる子供は、学校での出来事を引きずって放課後等デイサービスにやってくることも多いので『学校で何が原因でどのように対処してどうなった(現在の様子はどうだ)』というのを把握しましょう。
また、時折子供一人で送迎車のところまで来てしまう子も居るかと思いますが、その際は担当の先生を呼んでしっかりと先生から引き受けるようにしましょう。
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学校送迎時のルール確認
ルールは学校や送迎方法により様々だと思いますが、校送迎時にルールを確認し、それを守ることも学校との重要な連携でもあります。
主なものでは、送迎車の入校時間や車の停車場所、身分証明書やユニホームの着用、子供の引き受け票の提示などがあります。細かいものは必ず学校の担当の先生に確認するようにしましょう。
近年では何処の学校も放課後等デイサービスや学童の送迎車が多く、学校内だけでなく、路上駐車や渋滞など近隣の住民や商店などから学校が苦情を受けることも多いので、決められたルールは徹底しましょう。
下校時のトラブルや連絡体制
下校時のトラブルや学校との連絡体制もしっかりとルールつくりをする必要があります。
下校時に送迎車が事故に巻き込まれたり、子供の怪我や病気などが発生した場合のために、対処マニュアルを作成し、学校だけでなく保護者や関係者に適切に連絡できる体制を作りましょう。
また、学校から送迎担当者に連絡が出来るように、送迎担当者の携帯電話の番号なども通知しておくことも重要です。
教育支援計画の情報提供
教育支援計画の情報提供は保護者の同意を得たとしても、学校側からすると個人情報や機微情報の管理の観点から提供を行うのは現実問題難しいでしょう。
一般的な方法としては教育支援計画は学校から貰うのではなく、保護者から教育支援計画のコピーなどを受け取るのが多いかと思います。その上で不明点や実際に学校ではどのような事を行っているかを、個別に確認するやり方を取ることが良いでしょう。
保護者からも自宅ではどのように取り組んでいるかを確認することで、学校、家庭、放課後等デイサービスの3ヶ所が同じ方向を見定めて子供に支援を行う事が出来ます。
また、放課後等デイサービスの報酬において、『関係機関連携加算(Ⅰ)』と言うものあります。
これは子供が通っている保育所や学校等と連携し、個別支援計画を作成すると加算が出来るもので、月に1回200単位となっています。比較的単位数が大きいことから、学校等との連携を重視していることが読み取れます。
行事や授業参観などへの参加
特別支援学校では一般の人へ向けた公開授業や授業参観などを行っていることが多く、そのような際には積極的に参加するようにしましょう。
子供は学校、家庭、放課後等デイサービスとそれぞれの顔を持っています。放課後等デイサービスではやらないような事でも、学校ではしっかりと行っていたりと新たな発見が出来ると思います。
また、授業内容を見ることで学校や先生などがどのように支援(人員や道具、教室の構造化)しているかを確認できます。
行事についても運動会、発表会、学園祭、販売会など様々な機会で参加出来る事が多いので、積極的に参加しその場面ごとの子供の様子を見ておきましょう。放課後等デイサービスの職員が見学にいくことで、子供自身も張り切ったり頑張ったりする事にも繋がります。
連絡ノートの共有
特別に学校と情報共有が必要な場合には、保護者同意のもとに連絡ノートの作成も重要かと思います。
しかし、実際に学校と放課後等デイサービスだけでやり取りするのは難しいと思うので、保護者を経由し、学校、保護者、放課後等デイサービスの3者間で共有するのが良いと思います。
保護者によっては学校の連絡帳を確認の許可をくださる方もいるので、学校の連絡帳をベースに情報共有する方法もあります。
各種会議
サービス担当者会議の開催時に学校の先生が出席された際には、学校での様子や力を入れている勉強や訓練などを確認しましょう。
サービス担当者会議だけでなく、地域の連絡会、自治体の会議や部会、学校が主催する放課後等デイサービスの連絡会などにも積極的に参加し、学校の先生だけでなく地域の関係者との連携や情報交換などを行いましょう。
その他の連携方法
放課後等デイサービスのガイドラインの内容以外にも、学校との連携を取る方法があります。
夏休みなどの長期休みや祝日などに学校が校庭・プール・体育館などの利用を開放している場合には、放課後等デイサービスの活動の一環として利用し、活動内容や子供の様子を先生に見てもらうのも良いでしょう。
夏休みなどに学校側に連絡して個別に打ち合わせや会議などを設定してもらったり、逆に放課後等デイサービスの活動に見学しに来てもらうのも良いと思います。私のいる施設では夏休みなどに先生が活動内容を見学に来ることもあります。
放課後等デイサービスで行う行事に学校の先生を招待し、一緒に活動に参加してもらうという方法も有ります。
まとめ
放課後等デイサービスと学校との連携について、簡単ではありますがまとめてみました。
家庭に次いで活動時間の長い学校との連携や情報の共有は、放課後等デイサービスにとっては必須で、学校との関係は切っても離せないものとなっています。
学校からの情報を元に活動をする事で子供本人に適した支援をスムーズに行う事が出来るだけでなく、逆に情報を提供する事で学校も放課後等デイサービスを考慮した内容や体制に繋がる事もあります。
一番大事なのは、学校との連携を行う事は私たち放課後等デイサービスのためではなく、子供本人の成長にとって重要な事だということを理解する事です。