正しい姿勢の保持が難しい子への放課後等デイサービスでの支援や対処方法
正しい姿勢の保持が難しい子への放課後等デイサービスでの支援や対処方法
放課後等デイサービスを利用している子の中には、姿勢を保持するのが難しい子が見られます。
椅子に座っていても姿勢が崩れてしまったり、椅子の上であぐらをかいたり、机に肘を立てて頭を支えていたり。場合によっては姿勢を保持するのが難しく、床に寝転んでしまうという事もあります。
正しい姿勢が取れないと周囲の人からは『ふざけている』『だらしがない』と思われてしまう事があります。
また、姿勢の保持が難しいので、体を支える事に意識が向いて別のことが疎かになったり、姿勢を保てないことで勉強や作業に集中出来ないこともあります。
そんな姿勢の保持が難しい子に対して、放課後等デイサービスではどのような支援や対処を行えばよいのか紹介します。
子供が姿勢の保持ができない理由
子供が子供が姿勢の保持ができない理由には、さまざまな背景が考えられます。まずは、どのような理由から姿勢を保てないのかを知ることが重要です。
体力の弱さや筋肉の発達の遅れ
発達障害の子は体力が少なく疲れやすい特徴を持っていたり、筋肉の発達が遅れているため体幹の機能が弱いことがあります。筋肉の発達が遅れていると姿勢を正すだけでなく保持するのも難しくなるので、体が傾いたりフラフラと動いてしまうこともあります。
身体に関する障害や病気や麻痺などを持っている子の場合には、正しい姿勢自体をとることが出来ません。
筋肉の低緊張がある子の場合も、筋肉をしっかりと張る事が出来ないため、体位の保持が難しくなります。
自分の体のイメージが出来ない
発達障害の子はボディイメージを捕らえる事が難しく、自分の体の部位がどのような状態になっているのかが分からない場合があります。
ボディイメージを捕らえるのが困難であると、自分では正しい姿勢をしていると思っていても、実際には体が曲がっていたり、手足の向きがチグハグだということがあります。
特に目で捕らえる事が出来ない背筋や後方の部分、体から離れている手足の位置は、把握するのが難しくなります。
感覚過敏から
発達障害の子には体の感覚がとても敏感となる『感覚過敏』という特徴を持っていることが多いです。
触覚が敏感になると椅子の座面が硬く痛いと感じたり、背もたれが当たる感覚を不快などと思うことがあります。
聴覚過敏や視覚過敏を持っていると、それらの感覚過敏の特性から集中が出来ず、姿勢の保持も難しくなります。
例えば、聴覚の過敏があるとザワザワした教室などではウルサイと感じて集中が出来なくなります。視覚過敏があると日光や蛍光灯を眩しいと感じたり、多くの物が一度に目に入り混乱してしまいます。
椅子や机が体に合っていない
椅子や机が体に合っていないと正しい姿勢を保持するばかりか、座っていること自体が辛くなってしまいます。
椅子や机はサイズだけでなく、触り心地や密着する部分の感触なども関連します。素材がツルツルした椅子などでは、お尻が滑って前のほうに動いてしまうので姿勢が崩れてしまいます。
正しい姿勢がわからない
正しい姿勢がわからないため、綺麗な姿勢をするのが出来ないこともあります。
このような場合「姿勢を正して」と注意されても何が正しい姿勢なのかわかりません。
「前を向いて座って」と言われても、どの方向が前なのか理解できていないという事も有ります。
普段から正しい姿勢をとっていない
自宅などで普段から正しい姿勢をとることが少ないと、正しい姿勢への理解や、体の慣れが無いため、体勢を保持するのが難しくなります。
例としてですが、私たちが法事や改まった席で正座をするとすぐに足が痺れてしまいます。ですが、普段から正座で座っている人だと、体が慣れていたり力加減や抜き具合、体重の掛け方などのコツを知っているため、足も痺れずに長時間座っていることが出来るのと一緒で、経験や慣れなども重要になります。
多動性の特徴のため
ADHD(注意欠陥・多動性障害)の子の場合には、多動性の特徴が強い事があります。
多動性の特徴が強いと、止まっていたり一箇所に留まっている事が難しくなり、体をソワソワと動かしたり、その場から立ち歩いてしまう事があります。
姿勢保持が難しい子への支援や対処方法
姿勢保持が難しい子に対しては放課後等デイサービスでどのような支援方法や対処方法が行えるのか紹介します。
体力をつける活動を取り入れる
体力が少ない子や筋力の発達が弱い子の場合には、放課後等デイサービスで体を鍛え体力をつける活動を取り入れましょう。
体力をつける活動は様々ありますが、野外ではお散歩や公園で遊具やアスレチックを使った活動、室内では『サーキットトレーニング』『ストレッチ』『バランスボール』『トランポリン』などを用いる方法があります。
遊びの中でも鬼ごっこやリトミックなどを取り入れたり、日常生活の中でお手伝いや衣類の脱ぎ着など体を動かす動作を取り入れましょう。
ボディイメージを持たせる
ボディイメージへの理解が乏しく、自分からだの動きや位置の把握が難しい子の場合には、様々な体を動かす活動を取り入れましょう。
体の動きには全身の部位を使う『粗大運動』と、手先などの細かい動きである『微細運動』があります。どちらもボディイメージを持たせるためには重要な動きになるので、遊びやスポーツの中で『粗大運動』を行い、作業や課題など机上のトレーニングで『微細運動』を取り入れましょう。
また、大きな姿見の鏡などを用意して自分の姿勢の様子を実際に見てもらったり、職員が子供の体を誘導し正しい姿勢への体の位置を理解してもらうという支援方法もあります。
環境を整える
感覚過敏で集中が出来ない子には環境を整えることも重要です。
音に敏感な場合には、個室や人から離れた場所など静かな環境を作ったり、イヤーマフや耳栓などを使用させる方法があります。
視覚過敏の子の場合には室内の明るさを調節する、視界に気になるものが入らないように物をどかす、座る向きなどを調整するなどの対応があります。
椅子や机を合わせる
座る姿勢が保持できない場合には、その子に合った椅子や机を用意しましょう。
個別に用意できない場合には、座面に座り心地の良いクッションを用意したり、お尻が椅子から滑らないように滑り止めのマットを敷くなどの対応をとると良いでしょう。
椅子や机の高さが合わない場合には、足元に足置き台を置いたり、椅子や机の足の高さを調整する部品などを使用する方法があります。
椅子だけの状態で姿勢が安定しない場合には、机も用意することで机に手を置き姿勢を保持しやすくなる事もあります。
正しい姿勢を教える
正しい姿勢が分からない場合には、綺麗な姿勢の取り方を教えてあげましょう。
姿勢の教え方には職員がお手本を見せたり、上手に出来るお友達を参考にさせます。
正しい姿勢をとる際に自分の体のイメージが掴めない場合には、全身の写る鏡で見てもらったり、動画や写真などで写して本人に確認してもらうという方法も有ります。
正しい姿勢を取る時間を作る
普段から正しい姿勢をとる時間が少ない場合には、放課後等デイサービスの活動の中でその時間を作りましょう。
例えば、始まりの会と終わりの会だけは良い姿勢にする、おやつを食べる際には正しい姿勢をとるなどです。
また、机上の訓練や課題の際にも「最初の1分は良い姿勢をする」などと取り入れても良いでしょう。
動いても良い時間を取り入れる
多動性の特徴を持っている子に対しては、長時間その場で綺麗な姿勢を取らせ続けるのは苦痛ですし、ストレスなどからイライラしてしまうこともあります。
そのため、定期的にストレッチや伸びなど体を動かす時間を取り入れたり、立ち歩いても良い時間を設定する事も必要になります。
多動性の子以外でも姿勢を保持するのが難しい子は、姿勢を取るために力を入れ続けたり、姿勢に意識を集中している場合も多いです。このような子達も長時間姿勢保持をさせていると疲れてしまうので、定期的なリラックスタイムは必要になります。
また、事前に姿勢を正していなくてはいけない時間などを教えて、見通しを付けておくことも重要になります。
まとめ
正しい姿勢の保持が難しい子は、様々な理由が考えられます。
机に肘を置いたり椅子であぐらをかいているような子でも、実は必死に姿勢を保持しようと頑張っている場合もあります。
放課後等デイサービスにおいては子供が姿勢の保持が出来ない理由をしっかりと理解し、子供一人ひとりの状態や特性を考えて支援を行いましょう。
支援においては『姿勢の保持』だけに集中しすぎると子供も辛くなってしまいます。そのため、遊びや運動のなどの活動の中で姿勢の保持につなげられる様に支援を行うと良いでしょう。