放課後等デイサービスのアセスメント方法
放課後等デイサービスのアセスメント方法
ご利用者が放課後等デイサービスを契約し利用をするにあたって、支援の基本として最初に行うものにアセスメントがあります。
アセスメントとは「事前評価」と言われることもあり、利用者に関する情報の収集を行いそれを分析し、支援や療育をすべき課題や目標を把握するものになります。
アセスメントの行い方や必要とするツール、情報のまとめ方などはそれぞれの放課後等デイサービスによって様々あると思いますが、ここでは基本的なアセスメントの方法やまとめる情報などを紹介します。
放課後等デイサービスでのアセスメントの行い方
放課後等デイサービスのアセスメントは子供の発達の状態、生活環境、家族や家庭の環境、保護者や子供本人が望んでいる状況などを見立てて、適切な支援を行うために必要な情報を集め評価します。
そのため、アセスメントを疎かにしてしまうと、支援や療育の基礎が揺らいでしまうほか、子供や保護者が本人が望む支援と異なってしまうことにもなるので注意が必要です。
アセスメントでは、保護者から直接子供本人の様子を聞いた情報、各種診断や知能検査・能力検査など客観的に判断された情報、実際に子供本人の行動を観察して得た情報を用いる方法があります。
アセスメントで得た情報はアセスメントシートなど情報をまとめるフォーマットに落とし込んで内容を整理していきましょう。
アセスメントシートとフェイスシート
アセスメントを行う際には情報をまとめるフォーマットとして、アセスメントシートとフェイスシートを用いることが多いと思います。それぞれ使用目的やまとめる情報が異なるので効率よく作成する必要があります。
フェイスシートとは
フェイスシートとはご利用者の顔となる情報を載せたシートとなります。
フェイスシートには氏名、性別、年齢、生年月日、住所、連絡先(自宅・保護者・保護者勤務先、祖父母宅等)、家族構成、学校名、手帳の有無や判定状況、障害名や疾病名、通院先、服薬の有無や種類、特記事項などを記載します。
フェイスシートは、ご利用者の基本情報をひと目でわかるように記載する必要があります。また、緊急時の対応の際にはフェイスシートの内容を用いて連絡などを取ることになるので、情報は正しく記載し、緊急連絡先などは定期的に更新や確認を行うようにしましょう。
アセスメントシートとは
アセスメントシートとはご利用者を支援するために必要な情報を記載したシートになります。アセスメントにおいて事前に情報収集した内容を細かく記載し、支援や療育の基本とします。
アセスメントシートには、氏名、手帳の有無や判定状況、障害名や疾病名、障害特性、得意なこと、苦手なこと、日常生活、社会性、コミュニケーション、学習面、余暇、自宅での様子などを記載します。
アセスメントで聞き取る情報
放課後等デイサービスのアセスメントで、保護者もしくは本人から聞き取っておくと良い情報には以下のものがあります。
障害や疾病の状況
子供本人が抱えている障害や疾病の状況を確認します。
手帳の取得やそれぞれの障害の等級、服薬の有無、癲癇発作の有無、その他注意すべき点を確認します。
身体に障害がある子の場合には、補助すべき部分、車椅子や杖など各種補装具の取り扱いについても確認しましょう。医療行為の必要とされる子の場合、その行為が事業所で対処可能であるかどうかも確認が必要です。
服薬の有る場合には放課後等デイサービスの活動中に飲ませる必要が有るのかや、どの種類の薬を飲んでいるのか、飲んだ際にはどのような効果が有るのかを確認しましょう。服薬する薬の種類によっては副作用(眠くなる、喉が渇く、ぼーっとする、尿の色が変わる、お腹がゆるくなる等)の有無と、有る場合にはどのようなものが見られるかを聞いておきます。
アレルギーがある子供の場合には、食べてはいけない食品、アレルギーとなる花粉の種類や時期なども確認する必要があります。
必要に応じては母子手帳から生育暦などを参考にしましょう。
障害特性や子供の特徴
障害の特性や子供の特徴などを確認します。
発達障害の子供の場合には、各種感覚過敏、パニック、自傷行為、他害行為、異食、こだわり等注意すべき点が多いので、特性の発生条件や状態や対処方法などを聞いておきます。
日常生活の様子
日常生活の様子では、食事の介助、衣類の着脱、自分の物の管理、排泄など、放課後等デイサービスで生活するうえで介助が必要な部分や、どの程度自分で行うことができるかなどを確認します。
食事やおやつの提供においては、肥満などからカロリー摂取の制限を受けている場合もあるので、食事量の管理をする必要があるかの確認も行いましょう。
コミュニケーション
コミュニケーションでは会話の有無、話せる場合はどの程度か、相手の言うことを理解できるか、自分からの要求があるか、非言語以外のコミュニケーション方法、子供本人が理解しやすい方法などを確認します。
社会性
社会性では状況の理解、スケジュールの理解、環境への適応、友達や周囲の人たちへの係わり、野外での様子、買い物の理解などを確認します。
学習面
学習面では文字や数字の理解、時計の理解、大小、長い短い、重い軽い等がどの程度まで理解しているかを確認します。
この部分は保護者に話を聞くだけでなく、実際に子供に質問をしてみたり、検査用のツールなどを使って判断することができます。
学校に通学している場合には学校でどのような授業を行っているかや、学校の支援記録、宿題の有無などを見て確認する方法もあります。
運動面
運動面では歩いたり走ったりができるか、ジャンプができるか、体のバランス、球技ができるか、複数の動きを伴った運動ができるか、疲れやすさ、上手に物を持てるかなどを確認します。運動ができる子の場合には得意なスポーツや、好きな遊具や体を使った遊びなども聞いておきます。
得意なこと・苦手なこと
子供が得意なことや苦手なことも把握しておく必要があります。
得意なことがある場合にはその分野を伸ばしてあげたり、子供の自信を高める事ができます。苦手なことがある場合には、それらを活動の場から排除したり、場合によっては克服できるような支援が必要になります。
子供の生活の様子
子供の生活の様子を時系列やスケジュールで確認します。
1日の様子では学校に通学している平日と、学校がお休みの休日のパターンがあります。
場合によっては1週間の生活の様子も確認し、他の放課後等デイサービスの利用や習い事、医療機関への定期的な通院を把握します。
余暇の過ごし方や自宅では何をして遊んでいるかなども確認しておくと良いでしょう。
救急対応方法
癲癇発作を持っている子や、その他緊急の救急搬送が必要と考えられる場合には、対応方法を確認しておきます。
癲癇発作が発生した際に、何分痙攣が止まらなかった場合、呼吸が止まってしまった場合、など救急車を呼ぶタイミングと搬送先の病院を確認しておきます。
緊急時の連絡先も保護者だけでなく、保護者に電話が繋がらなかったときのため、祖父母や近くの親戚、保護者の勤務先の連絡先も聞いておきましょう。
他の機関やサービスの状況
保育所や幼稚園、学校の指導の記録、他の放課後等デイサービスの個別支援計画などがある場合にはそちらも参考にし、それぞれの施設の支援を共通して行えるようにすることも必要になります。
アセスメントで用いる検査や評価
アセスメントを行う際には、アセスメントツールや検査や評価の指標を用いることもあります。
アセスメントツールや指標は、講習やトレーニングを受けた専門家が行う必要を要するのものあるので、行う際には注意が必要です。
なお、アセスメントで使用した検査結果や評価は、医師が行わない限り『診断』にはならないので、あくまでも目安として用いりましょう。また、保護者に検査結果を伝える際にも言い方に気をつける必要があります。
主なアセスメントツールや指標等
- 強度行動障害判定基準:強度行動障害児者を判断するための基準
- M-CHAT:乳幼児期の自閉症チェックリスト
- PARS:母親と面談を行い、子供の自閉スペクトラム症の尺度のチェック
- ADHD-RS:精神障害の診断と統計マニュアルを基にしたADHDの尺度のチェック
- CARS:小児自閉症評定尺度。
- PEP:自閉症・発達障害児教育診断検査
- KIDS乳幼児発達スケール:乳幼児の日ごろの行動から発達状況を捉える尺度
- 遠城寺式・乳幼児分析的発達検査:乳幼児の状況を観察し子供の発達の特徴を捉える
- S-M社会生活能力検査:子どもの日頃の様子から社会生活能力の発達を捉える検査
- CBCL(子どもの行動チェックリスト ):子供の問題行動を測定するための尺度
- TRF:CBCLのひとつで回答者を子供の教師に向けたもの
- SDQ(子どもの強さと困難さアンケート):子供の問題行動を測定するための尺度
主な知能検査や発達検査
- ウェクスラー式:国際的に使用されている知能検査で、幼児用、児童用、成人用が有り
- 田中ビネー式:用具を使用し子供の発達状態や知能を検査
- K-ABC:子供の知能を認知処理と知識や技能の習得度から評価する
- K式:乳幼児や児童の発達状態を調べ発達の全体像をとらえるための検査
アセスメント情報の守秘義務
アセスメントで得た情報は、利用者やその家族の個人情報や機微な情報を含むものです。
アセスメント情報は利用者の支援を行うため以外に使用することは出来ず、他人に情報を漏らしたり、正当な理由無く事業所外に持ち出すようなことは無いように厳重に扱いましょう。
またアセスメント情報も含め放課後等デイサービスで得た利用者の情報は、退職しても他人に話すなどの漏洩を行ってはいけません。
まとめ
ここでは主なアセスメントの確認方法や内容を紹介しましたが、これだけの情報では足らないことも多々あります。そのため出来るだけ多くの情報を取得し、総合的に判断し活用します。
保護者と話をする中で、深く話を聞いたほうが良い場合や、今までの支援の経験から聞いたほうが良い点などもしっかりと確認し、子供の支援を行う中で迷いが出ないようにしましょう。
また、アセスメントは最初の1回だけで終わりと言うわけではありません。子供への支援を行う中で、気になった点などがあったら随時保護者に確認し、子供にとってよりよい支援へとつなげていきましょう。