放課後等デイサービスでのパニックと対処方法
放課後等デイサービスでのパニックと対処方法
発達障害の子は強い不安や恐怖を感じたり、状況が判断出来ずに混乱すると激しい興奮やパニックを起こしてしまうことがあります。
パニックとは突発的に強い恐怖や、過度なストレスや不安に晒されることで、気持ちが混乱してしまう状況です。子供の癇癪と似ていますが、パニックは気持ちが混乱している状態で、癇癪は自分の思い通りに行かず怒っている状況だという違いがあります。
パニックとなった場合には気持ち以外にも思考が正常に働いていないため、周囲の人が「落ち着くように」と声をかけてもまったく耳に入らなくなります。また、注意や声かけをすると外部からの刺激と判断してしまい、逆効果になる事もあるので注意が必要です。
パニックになると思考が正常に動作しないため、大きな声を出したり体が動いてしまうこともあります。
体の動きには『暴れる』『物を叩いたり投げる』『自分の体を傷つける(自傷行為)』『他人に危害を与える(他害行為)』『奇声を上げる』などの行動が見られたり、逆に何も出来ず固まってしまったりうずくまってしまうという事もあります。
健常者の人はパニックとなるような出来事が起きても、過去の経験から対処方法を考えたり、気持ちを別の方に向けて切り替えたり、場合によっては諦めたりと自分を落ち着かせるように考えや行動を取ることが出来ます。
発達障害の人は困難に立ち向かった経験が少なく対処方法がわからなかったり、気持ちの切り替えをすることが苦手であることが多いです。そのため、あせる気持ちが抑えることが出来ず、どんどんを大きくなってしまい限界を超えたところでパニックになってしまいます。
パニックの原因
発達障害の子がパニックを起こす原因には、その子の特徴や特性、そのときの状況、過去の出来事などにより様々で、複数の事が理由となり発生することもあります。周囲からみるといきなりパニックになったように感じますが、かならず原因となる出来事があるため
パニックが発生した際には、その原因となることを確認しましょう。
感覚過敏から
発達障害の子は様々な感覚が非常に敏感となる『感覚過敏』という特徴を持っていることがあります。
聴覚過敏だとちょっとした音が非常に大きく聞こえたり、金属音や電子音、子供の泣き声や犬の鳴き声、クラクションの音など嫌いな音が多くなり、音によりパニックを引き起こすことがあります。
触覚過敏だと手を握られた際に痛いと感じたり、不意に触られた際に強い刺激を感じビックリしてしまうことがあります。
視覚過敏だと明るい場所や日光などで眩しいと感じ動けなくなったり、人が多い場所やにぎやかな場所では目に入る情報が多すぎて混乱することがあります。
予期しない出来事が起きた
予期しない出来事に対応するのが困難なのも発達障害の子の特徴です。発達障害の子は頭の中で今後行うことに予定を立てて行動していますが、その予定に無いことが発生すると混乱してしまいます。
予定に無いことが発生すると、『何が発生したのか』『どのように対処をすればよいのか』などがわからず、不安やストレスが発生するためパニックに繋がります。
いつもと違う事がある
発達障害の子は変わらない物に安心を見出します。これは上記と同じように、普段と違うことが有ると、対処の方法がわからないため混乱してしまうからです。
一見些細と見られるような変更点でも、発達障害の子は気がつき、いつもと違うと感じ取ります。たとえば、人や物の位置、個数、色、見た目、時間、音、順序、などです。
場合によっては放課後等デイサービス室内の物の位置が少し違うだけで不安を感じたり、送迎ルートが前日と異なると混乱してしまう事もあります。
過去の出来事
発達障害の子は『フラッシュバック』という特徴を持っていることがあり、過去の辛い出来事や嫌な事を不意に強烈に思い出して、パニックになることがあります。
また、時間の繋がりや前後関係などの概念の理解も難しいため、大昔の事をたった今の出来事だと感じる『タイムスリップ現象』とよばれる特徴もあります。こちらも過去のいやな出来事を現在のことだと思い込んでパニックに繋がります。
叱責や注意
叱責や注意を受けることでストレスや恐怖を感じ、パニックに繋がることもあります。
悪いことをした場合や危険な行動があった場合には、叱責や注意は必要なことですが、声を荒げて怒り恐怖心を与えるような方法ではなく、本人が理解し反省できるような声かけにしましょう。
疲労やストレス
疲れている際やストレスなどが溜まっている場合、それが原因となりパニックになる事もあります。疲労には肉体的な疲れだけではなく、精神的な疲れも含まれます。
放課後等デイサービス来所時には、自宅からの疲れや、学校でのストレスを抱えてくることもあるので、送迎時の引継ぎでは子供のその日の様子などを確認することが重要になります。
『運動会』『発表会』『学園祭』前後は学校で変則的な授業や、特別な課題や練習を行っており、疲れやストレスを抱えていることが多いので注意が必要です。
自分の気持ちが伝わらない
自閉症などの発達障害の子は知的の問題や、コミュニケーション能力の問題から、自分の気持ちや要求を相手に伝えることが非常に困難です。
自分の気持ちを伝えようとしても伝える方法が分からなかったり、伝えていても相手が理解してくれない場合には、自分の思いだけが強くなるばかりかストレスを抱えてしまいパニックに繋がる事があります。
相手からの要求が理解できない
会話や指示などで相手から何かを言われても、要求されている内容がわからずに混乱しパニックに繋がることもあります。
放課後等デイサービスでは指示の入れ方や注意の仕方、作業や課題の説明などを行う際には、子供の特徴を理解し、分かりやすく伝えることが必要になります。
過度な興奮
パニックは自分の気持ちをコントロールできなくなると引き起こされるため、過度な興奮によって発生することがあります。
そのため子供が何か喜んでいてテンションが非常に高い場合には、クールダウンをしたり、別のことへと気持ちを切り替えてあげることも必要になります。
空腹
空腹のイライラからパニックを引き起こすことがあります。放課後等デイサービスを利用する子供は成長期であるため、食べ物も沢山食べたがる年代です。
偏食やこだわりの有る子は学校の給食を食べることが出来なかったり、肥満の問題がある子はカロリー制限から量を減らされてしまうこともあり、放課後等デイサービスで提供されるおやつまで我慢できずイライラしパニックに繋がることも多いです。
放課後等デイサービスでのパニック対処法
放課後等デイサービスで子供のパニックが発生した場合には、本人、周囲の子供、職員、および物品の安全を確保し、本人が落ち着ける環境を作って見守ることが基本になります。
安全を確保する
パニックが発生した場合には子供本人と、他の子供、および放課後等デイサービス職員の安全を確保しましょう。
パニックが発生した場合、他人を蹴ったり噛んだりと危害を与える『他害行為』が発生したり、物を投げたりすることがあります。
パニック時の『他害行為』は気持ちのコントロールが出来ないため、本人がやりたいと思っていなくても、手足が出てしまったり、身近にあるものを強くつかんだりしてしまうことがあります。
まずはパニックを起こしている子供を周囲の人と離れた場所への誘導を試みます。子供本人の移動が難しい場合には、他の子供たちを安全な場所に避難させ、周囲の危険な物なども移動させましょう。
自分を傷つける自傷行為が見られた際には、怪我にならないように緩衝材となるクッションや毛布などを与えるようにします。
他害行為が激しい場合や、体格の大きな子のパニックの場合には、職員も子供を見守れる範囲で距離を取ったり、パニックへの対応が出来るベテラン職員や体力のある男性職員に代わるようにしましょう。
クールダウンをさせる
パニック時には本人も混乱しているため、周囲からの声かけや注意も耳に届きません。また、下手に声をかけてしまうと、余計に興奮することもあります。
パニックが発生した場合には、本人が落ち着くまでクールダウンするようにしましょう。クールダウンの際に誘導で本人が移動できる場合には、静かな空間や落ち着ける個室などに移動させましょう。
移動が難しい場合には、包まって個人の空間が作れる毛布などを手渡したり、落ち着けるグッズなどを渡して気持ちの安定を図ります。
パニックの原因を特定する
こちらはパニック後の対応になりますが、子供が落ち着いたら理由を聞いてみたり、パニックが発生した際の状況などを確認し原因を特定しましょう。
パニックを引き起こした原因や理由と考えられそうな事を理解することで、次回のパニックへの対処を取れるだけでなく、子供本人が過ごしやすい放課後等デイサービスの環境を整えることが出来ます。
まとめ
発達障害の子は不安や恐怖、強いストレスなどを感じると、気持ちのコントロールが出来ずにパニックに繋がる事があります。発達障害の子供のパニックは問題行動と見られがちですが、気持ちがコントロールできないまで追い込まれているというサインでもあります。
パニックの原因には、子供によったりそのときの状況により様々なものがあります。
パニックを起こさないためにも、子供一人ひとりの特性を理解し、ストレスや不安を与えない放課後等デイサービスの活動を行うことが重要になります。