放課後等デイサービスで過度に人を触る場合の対処と支援方法

放課後等デイサービスでの活動時に、お友達や職員の体を過度に触る子供が見られることがあります。

ある年齢が低い子なら余り気にもならないですが、ある程度の年齢に達していると、周囲から見たら不適切な行動だと思われたり、社会に出た際に問題となってしまう事があります。

そのような必要以上に人を触ったり、過度にスキンシップが多い子供の場合には、放課後等デイサービスではどのような指導や注意、支援を行えばよいのでしょうか。

子供が必要以上に人に触ってしまう場合の対処と支援方法

人を必要以上に触ってしまう子を支援する場合には、まず、その子の特徴や特性を理解し、人を触る理由の確認をしてから対処を行いましょう。ここでは主な対処方法を紹介します。

触ってしまう理由を確認する

障害を持った子供の中でも、自閉症などの発達障害の子供が人に触ってしまうのにはさまざまな理由があります。

単純に異性や好きな子を触りたいという場合から、触る感覚を求めている、相手の反応や注意を受けることを楽しんでいる、表情や動きが気になる、髪の毛や服装などに興味を示している、嫌いだから、何らかのコミュニケーションのためなど、さまざまなパターンがあります。

相手を触ってしまう理由が定かではないと、指導や支援を行うことが出来ないので、まずは子供の特徴や特徴、触ってしまう状況などを判断し、その理由を確認する事が必要です。

触る前に声をかける

勝手に人の体を触ってしまうときには、あらかじめ声をかけて許可を取るようにしましょう。声のかけ方には「タッチしても良いですか?」「握手をしても良いですか?」など、子供の特性や興味分野に応じて、適切な言葉を教えてあげます。

許可を取るだけでなく、断られた場合には触ってはいけない事や、触ることを諦めなければならないことも教えましょう。

また、触る際の声かけも、知らない人には行わず、仲の良いお友達や知り合いだけにするようにしましょう。

過去に、人に触りたいときには声をかけるようにと指導されていた高校生の子が、道端で知らない女性に「触っても良いですか?」と声をかけてしまい、不審者扱いされてしまった事が有りました。

小さい子でしたら笑って許されると思いますが、高校生ぐらいの年齢になると相手も急に「触っても良いか?」と尋ねられたらビックリすると思います。そのため、ある程度の年齢になったら、知らない人を触りたくなっても我慢する事などを伝えることも必要になります。

触っても良い人を決める

お友達や通りがかりの人など、誰にでも触ってしまう場合には、触ってよい人と駄目な人を決めておきましょう。

触ってよい人にはお父さんやお母さん、学校の○○先生、放課後等デイサービスのスタッフの○○さんなど、具体的に決めます。なお、触っても良い人を決める際には、基本的に同性の人物にしましょう。

触っても良い人を教える際には絵カードや写真を用いて、触ってよい人と駄目な人を伝えると視覚から情報も入り理解がしやすくなります。

曖昧な条件の理解が苦手な子の場合には、「異性に触っては駄目」「家族以外は触ってはいけない」などはっきりとしたルールを作ってしまう方法も必要です。

触る対象者を近づけない

特定のお友達のみを触ろうとする場合には、対象の人物を近づけさせず距離を取らせるようにしましょう。活動などで近づく場合には、間に職員が入ったり、触らないように事前に声をかけておくなど注意をします。

特定のお友達のみ触ろうとする場合には「好きだから」「嫌いだから」などの感情だけでなく、「触った際の反応が面白い」「大きな声を出すから」「髪の毛が長いから」「触った感覚が好きだから」など様々な理由がある事が多いです。そのため、特定の子供のみを触ってしまう理由を確認する事も対処として必要になります。

適切な距離感を教える

お友達にや異性に過度に近づいたり触ってしまうという場合には、人との適切な距離感を教えてあげましょう。

わかりやすい方法としては、人に近寄るときは手の届かない範囲(前習え)の距離を取るように教えます。

距離感の理解が出来る子には、パーソナルスペースの概念も徐々に伝えるようにしましょう。

パーソナルスペースとは他人に近寄られると不快と感じる距離感で、相手の新密度や場の状況などによりその距離感は変化します。

一般的には恋人や家族の距離感である『密接距離』が0cmから45cm、仲の良いお友達との距離感である『個体距離』が45cmから120cm、それほど仲の良くない人と会話する距離である『社会距離』が120cmから350cm、複数の相手を見渡せる距離である『公共距離』が350cmから700cmとされています。

コミュニケーション方法を教える

自閉症などの発達障害の子供は、コミュニケーション能力を獲得しておらず、会話が困難であったり、会話が出来ても適切な言葉で話すことが難しい場合が多く見られます。

そのため、コミュニケーションの方法として、人に対して「触る」「叩く」「引っ張る」などの行動を取ることがあります。

コミュニケーションの方法を教えるのは難しいと思いますが、言葉の出る子であれば「ねえねえ」など触る前に声をかける方法を教えましょう。

言葉で伝えるのが難しい場合には、「トントン」と肩を叩く、手を引くなど、体の触ってよい場所や方法など、コミュニケーションの手段として適切な体の触り方を伝えてあげましょう。

代替手段をとる

相手に触ったり抱きついたりしてしまうという場合には、代替の方法を取るようにしましょう。

一般的に使われる方法には「ハイタッチ」や「握手」などがあります。代替手段を行う場合にも、いきなりタッチや握手をするのではなく、「握手をしてください」など相手に断りを入れてから行うようにしましょう。

ただ、代替手段で「ハイタッチ」や「握手」などを取り入れると、それがこだわりになってしまうというパターンも比較的多く見られます。こだわりを持ちやすい子の場合には「ハイタッチ」や「握手」にこだわらないように注意が必要となります。

代替の物をつかう

子供によっては相手に抱きついたり、体を触ることで、気持ちを安定させたりしているという場合もあります。このような際は、好きな物や持つと落ち着くものを持たせたり、触り心地の良いものを代替品として用意する方法があります。

物では代替が効かず対象の人物が近くに居ないと落ち着かない場合には、体を触るのではなく握手にしたり、服のすそなどを持ってもらうといった方法を取ってもらいましょう。

スキンシップ方法の理解を促す

小さい子供の頃は抱きしめられたり、頭をなでられたりという方法でスキンシップを撮っていたと思いますが、子供が成長をすると共にスキンシップの方法も徐々に変わっていきます。

しかし、発達に遅れのある子どもの場合、対人関係の理解やコミュニケーション方法の獲得が難しいため、幼い頃のままのスキンシップ方法を取ってしまうということもあります。

スキンシップも年齢にあわせた方法に変えたり、言葉や行動などのコミュニケーション方法を教えてあげる事も重要です。

まとめ

放課後等デイサービスの活動中、人を過度に触ってしまうのには、さまざまな理由があります。

まずは子供の特徴や、子供が人に触る目的、人に触る際の前後関係などを判断し、どのような理由で人を触るのか理解する必要があります。子供が人に触る理由が理解できれば、適切な対処方法を取ってあげましょう。

なお、今まで好きな人に触れたのに、急に触れなくなると理解が出来ずパニックになったり、ストレスを溜め込んで別の問題行動に出てしまうこともあります。

支援をする際には、その子の特性、年齢や発達度合い、理解力などを考えて、無理の無いように行っていきましょう。