放課後等デイサービスとは
放課後等デイサービスとは
小学校1年生から高校生の障害を持つ子供を対象とした通所支援サービスです。
名前のとおり学校終了後の放課後や休日、夏休みや春休みなどの長期休暇の期間に、生活能力の向上を目的とした療育を行うほか、創作活動や作業活動の実施、余暇の過ごし方の提供、地域社会との交流の機会の提供を目的としています。
障害児本人だけでなく、障害を持つ子供の子育てに悩みを抱える保護者の相談をうけたり、保護者の時間を確保するために一時的に子供のケアを代行するという側面も持ちます。
放課後等デイサービスの法的立ち位置
放課後等デイサービスは平成24年の法律改正により定められた、都道府県または政令指定都市等特定の自治体で認可を受けた障害児通所サービスです。
『児童福祉法第六条の二の二の4』に「この法律で、放課後等デイサービスとは、学校教育法第一条に規定する学校(幼稚園及び大学を除く。)に就学している障害児につき、授業の終了後又は休業日に児童発達支援センターその他の厚生労働省令で定める施設に通わせ、生活能力の向上のために必要な訓練、社会との交流の促進その他の便宜を供与することをいう。」と定められています。
法律の改正以前は障害者自立支援法の『児童デイサービス』や、児童福祉法の『知的障害児通園施設』『肢体不自由児通園施設』などが障害種別ごとに分かれていましたが、身近な地域での支援体制を求める要望や、障害を持つ子供の放課後や夏休み等長期休みの居場所を求める多くの声から、各通所施設を一元化し地域に根付いたサービスが受けられるようにと設立されました。
放課後等デイサービスの対象者
放課後等デイサービスを利用できる対象の子供は、『身体に障害のある児童』『知的障害のある児童』『精神に障害の有る児童』の3障害対応が原則となっていますが、『発達障害児』や『障害の特性に応じて支援の必要な児童』も対象になります。
各種障害者手帳の有無は問わず、児童相談所や医師などにより療育の必要性が認められた児童も対象になります。
放課後等デイサービスの対象年齢
放課後等デイサービスを利用できる年齢は、小学1年生から高校3年生までの6歳から18歳までとなっています。
学校就学前の未就学児については『児童発達支援』というサービスがあり、そちらを利用することになります。
特例として幼稚園と大学を除く学校教育法に規定される学校に就学しており、引き続き放課後等デイサービスを利用しないと福祉を損なう恐れがある場合は満20歳になるまで利用できます。
放課後等デイサービスの利用方法
放課後等デイサービスの利用方法はそれぞれの自治体により若干異なりますが、一般的な利用までの流れは以下のようになります。
利用したい放課後等デイサービスを決める
利用したい放課後等デイサービスがある場合にはその事業所に見学や相談などに行き、実際に子供に適した放課後等デイサービスであるかを確認しましょう。
利用したい放課後等デイサービスの見つからない場合や決まっていない場合には、市町村の窓口や、学校の先生などに相談すると情報をもらえたり紹介を受けることも出来ます。
受給者証発行の申請を行う
利用したい放課後等デイサービスが決まったら、市区町村の役所の窓口に申請を行いに行きます。
窓口では各種障害手帳を所持している場合には手帳、医師による診断書などのほか、『障害児通所給付費支給申請書』『利用者負担額減額・免除等申請書』を提出します。
申請に必要な書類は自治体により異なるので、事前に相談や確認をしておきましょう。
実際に障害児通所支援事業所を利用する場合には『障害児支援利用計画』が必要になります。
『障害児支援利用計画』は利用する子供の総合的な支援方法や解決するべき課題などを踏まえて、最適なサービスが利用できるように作成する支援計画書です。
『障害児支援利用計画』は指定された障害児相談支援事業者に作成を依頼する方法と、利用者本人や家族や支援者などの相談支援事業者以外が作成する『セルフプラン』で作成する2パターンがあります。
放課後等デイサービスの利用料金
放課後等デイサービスの利用料金は、その事業所が行うサービスや、地域の条件などにもよりますが、おおよそ1日1万円程度かかります。ただし1万円を利用者がすべて払うのではなく、9割が国や都道府県や市町村が負担するので、残りの1割の料金が自己負担となります。
1割の自己負担金額も必ずしも満額払うわけではなく、障害児の自己負担金額には月ごとの上限額が以下の条件で決まっています。
- 生活保護世帯:負担上限月額0円。
- 低所得世帯(市町村民税非課税世帯):負担上限月額0円。
- 一般1(市町村民税課税世帯):負担上限月額4600円。
- 一般2(上記以外):負担上限月額37,200円。
一般1と一般2の違いとして、一般1は世帯の市町村民税の所得割が28万円未満(おおむね年収890万円以下)となっています。
また、法的に定められている利用料金以外に、各事業所の重要事項説明書等で決められている料金(おやつや軽食代金、工作や作業の材料費、外出時の公共交通機関代金など)がかかる場合があります。
放課後等デイサービスの利用日数
放課後等デイサービスの利用日数(受給日数)は、受給者証の発行や更新時に、本人と保護者の要望、実際の利用状況、障害の程度、家庭や本人の状況、療育や支援を必要とする量などから決まります。
利用日数について国からは「障害児本人の最善の利益を図り、その健全な発達のために必要な支援を適切に提供する観点から、支給の要否及び必要な支給量について適切に判断し、決定すること」として通達されています。
また、障害児の保護者など家族の就労や休息の目的とする場合には、「日中一時支援事業を活用すること」として、放課後等デイサービスの利用ではなく、日中一時支援事業への利用を促しています。
放課後等デイサービスの利用日数の上限
放課後等デイサービスの利用日数の上限については基本的に『各月の日数から8日を控除した日を上限とする事』と定められています。
具体的には月の日数が31日ある場合の利用日数は『31日から8日引いた日数』となるため23日が上限の日数となります。
参考:厚生労働省『障害児通所支援の質の向上及び障害児通所給付費等の通所給付決定に係る留意事項について』
なお、障害児の状態や家庭状況を鑑み、市町村が必要と判断した場合には原則の日数を超えて利用できるものとしていますが、支給決定前に支援の必要性を申請者や事業所などに十分に確認したうえで決定をする事とされています。
放課後等デイサービスの併用
複数の放課後等デイサービスを併用して利用する事も可能となっています。ただし、月単位で利用日数(支給量)が決まっているため、毎月その利用日数の上限を超えないように調整する必要があります。
複数の事業所を利用する際には、それぞれの事業所ごとに月々の利用日数を契約し、受給者証の事業所記入欄に記載をしてもらいましょう。
利用金額の調整は上限額管理事業所が行いますが、利用日数の管理は基本的に事業所が行う事が無いため保護者が管理するようにします。利用日数の合計がオーバーしてしまった場合には各事業所間での調整や、予定日のキャンセル、場合によっては利用料金の実費が請求される事が考えられます。
放課後等デイサービスの療育の内容や、保護者の仕事や送迎の都合などにより、事業所を併用する事にも大きなメリットがあります。ただし、便利だからといって子供の特性や療育内容が合わない場所を使用したり、多くの事業所を使いすぎて子供本人が混乱するような場合には併用箇所や日数を減らすなど対応を取りましょう。
放課後等デイサービスで受けられるサービス
放課後等デイサービスでは『障害児支援利用計画』を元にアセスメントを行い、保護者や本人のニーズを踏まえ、『デイサービス利用計画書』を作成します。
そして、作成した『デイサービス利用計画書』に沿って、「自立支援」「日常生活動作の向上」「創作活動」「地域との交流機会の提供」「余暇の提供」を基本的な活動として支援を提供します。
放課後等デイサービスの種類
放課後等デイサービスには療育や運営方針により大まかに幾つかの種類に分けることが出来ます。事業所によってはそれぞれの活動内容を組み合わせて行っている場所もあります。
個別指導型
個別学習塾のようなタイプの事業所で、1コマ単位の時間で療育を受けるといった形を取っているところが多いです。基本的に子供と指導員の割合が1対1になる事が多いので、苦手な部分を集中的に支援してもらうことができます。
集団活動型
集団での活動を基本としている事業所です。集団での活動や遊びを通し、コミュニケーションや社会ルールなどを学ぶことができます。様々な学年の子供や他の学校の子供も利用する事から、お友達が増えたり、お母さん同士の交流も深まることが多いです。
運動教室型
体を動かすことをメインに、体操、ダンス、マット運動、リトミック、トランポリン、サッカー、水泳などスポーツを中心に活動を行います。スポーツインストラクターや各種療法士などが在籍している事業所も多く、体の動きの問題、運動不足、肥満などの傾向がある子供に向いています。
学童保育型
学童保育のように預かりがメインで特定の活動プログラムが決まっておらず、遊びや宿題やおやつなどの大まかな流れのみで、比較的本人の自由な活動で過ごすことが多いタイプです。
法律の改正で以前は学童保育を行っていた事業所が放課後等デイサービスを運営していることも増えてきています。
習い事型
塾の様に学習に特化したところや、ピアノ、書道、絵画、パソコン、英会話、工作など、特定の内容に特化した事業所です。本人の趣味や興味を伸ばしたり、将来の職業を見据えた場合などに良いでしょう。
放課後等デイサービスのスタッフ
放課後等デイサービスには法的に、管理者1名(兼務可能)、児童発達支援管理責任者(研修を受け経験と資格を持つスタッフ)が1名、保育士か児童指導員または障害福祉サービス経験者が2名以上でうち半数以上は保育士か児童指導員で1名は常勤となっています。
送迎について
送迎についてはそれぞれの事業所により、行っている場所と行っていない場所があります。
送迎を行っている事業所で送迎サービスを利用する際には、1回につき重症心身障害児の場合は約370円、重症心身障害児以外の場合には約540円かかります。
なお、送迎については保護者に活動や事業所の様子を見てもらったり、スタッフとの情報共有する機会を増やすという目的や、子供の自主性を育むという理由などから送迎サービスをあえて行っていないというところもあります。
まとめ
放課後等デイサービスの役割や目的、ルールなどの決まりごとや、利用できるサービスとその内容などを大雑把ではありますが記載しました。
放課後等デイサービスの運用内容については、厚生労働省から公表されている『放課後等デイサービスガイドライン』を活用するようにしましょう。
利用者さん側としてはそれぞれの事業所に特徴や特色などがあるので、まずは見学や体験利用などをしてみると実際の雰囲気がつかめるのでよいのではと思います。