放課後等デイサービスで自分を傷つける自傷行為を行う子供の対処方法

放課後等デイサービスで自分を傷つける自傷行為を行う子供の対処方法

自閉症などの発達障害の子供は、時として自分を傷つけてしまう自傷行為をとる事があります。

発達障害の子供に見られる主な自傷行為の方法には「頭や顔を叩く」「手や足を噛む」「口内や唇を噛む」「髪の毛を毟ったり抜く」「頭や顔を床や壁に叩きつける」などがあります。

放課後等デイサービスの活動中に自傷行為が見られた場合にはどのように対処をすればよいのかまとめてみました。

なお、他人を攻撃してしまう他害行為については以下のページでまとめています。

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自傷行為を行う理由と原因

子供が自傷行為を行うのには原因があります。子供本人も好き好んで自分を傷つけているわけでは有りません。

自傷行為を対応するためには、自傷行為を行ってしまう理由を理解する事が重要になります。

不安やストレス

極度の不安やストレスを感じてしまうと、自分でストレスの発散や気持ちの切り替えなどの対処が出来ず、パニック状態となり自傷行為を行ってしまうことがあります。

不安やストレスには「怒られたり注意を受けた」「自分の思い通りにならなかった」「やりたいことを止められた」「不快な音などが聞こえた」「予定が変更になった」「見通しがつかなくなった」「苦手なことを強要された」など、子供の特徴により多くの物があります。

また、現在起きたことではなく、過去のことを急に思い出して混乱し、自傷行為を行うこともあるので注意が必要です。

感覚遊びや外部刺激を取り入れるため

自閉症などの発達障害の子供は、外部からの刺激を取り入れるために、様々な感覚遊びを行うことがあります。

通常感覚遊びというと、ブランコやすべり台のような動きのある物や、ボールプールや粘土遊びのように触った感覚を得るものになりますが、自閉症などの子が行う感覚遊びは、もっと単純な、手をひらひらさせる、手を叩く、飛び跳ねる、体を揺らす、グルグルと回るといったものになります。

その感覚遊びの中で、自分の顔や体を叩く、自分の手や足を噛む、頭や顔を壁や床に打ち付けるといった自身を傷つける行動を取ることがあります。

また、発達障害の子供は様々な感覚が鈍くなる、感覚鈍磨という特徴を持っている事があります。感覚鈍磨になると感じ方が鈍くなるので、周囲から見るととても痛そうな行動を取っていても、本人にしてみれば心地よい刺激だと思っている事もあります。

嫌いな感覚を打ち消そうとして

発達障害の子供の中には、様々な感覚がとても敏感になる感覚過敏という特徴を持っている事があります。

代表的なものには音に敏感になる聴覚過敏や、物に触るのを嫌がる触覚過敏、光を眩しく感じたりたくさんの動くものを見ると疲れてしまう視覚過敏などがあります。

これらの子供の中には、嫌な感覚を感じると不安でパニックとなり自傷行為に繋がったり、感じ取った嫌な感覚を打ち消そうとより強い刺激を求めて自分の体を傷つけるということがあります。

聴覚過敏の子では耳を強く抑える、音を打ち消そうとして大きな声を出す、という行動や、耳を叩く、手や腕を噛む、頭を壁などに打ち付けるという行動が見られることがあります。

周囲の人の気を引こうとして

自傷行為の中には周囲の人の気を自分に向けさせようとして行うことがあります。

発達障害の子供は言葉を話すことが出来なかったり、言葉を話せてもその状況に応じた適切な会話が出来ず、自分の思いや気持ちを上手に他人に伝えるのが難しいことがあります。

そのような状態の際に自傷行為を行うと相手が「どうしたの?」「だいじょうぶ?」と声をかけてくれるので、自分を傷つけると周囲の人が気にしてくれると間違ったコミュニケーションとして覚えてしまっている場合があります。

また、自傷行為を行うことで周囲の人の気を引かせるということを覚えてしまうと、「止めなさい」などの注意をしても、それ自体がコミュニケーションとなってしまうので、注意や声かけも逆効果になってしまう事があります。

自分の気持ちや意志が通らないため

発達障害の子供は、言葉での意思表示などコミュニケーションを的確に取れないことがあるため、自分の気持ちや意志が相手に伝わらないことで、イライラしてしまい自傷行為を行うことがあります。

これはコミュニケーションが上手に取れない年齢の小さい子供にも見られることがあり、自分の意志が通らないと、その場でひっくり返ったり、床などに頭などを打ち付ける行為を見せることがあります。

自傷行為の対処方法

放課後等デイサービスで自傷行為が見られた際には、その子の特徴や、周囲の状況などを踏まえて適切な対処を行う必要があります。

また、自傷行為が落ち着いた後には、傷の手当のほか、どのような状態で自傷行為が発生したのかを記録しておくと次からの対策にも役立つことがあります。

本人の安全を図る

自傷行為が発生した場合には、まず本人の安全を図ることが重要になります。

自傷行為中はパニック状態であるため、身の回りに危険なものがある場合にはそれらを排除し、本人の怪我が最小限で収まるようにします。

頭などを床にに強く打ち付けてしまう場合には、座布団やクッションなどを敷いてダメージを軽減させるなど対処をしましょう。

周囲の安全を図る

自傷行為が発生してしまったら、周囲の安全を図ることも重要です。

自傷行為中は極度に興奮しているため、物を投げたり、場合によっては攻撃先が自分から周囲の人へと向かい、他害行為にと繋がる事もあります。

まずは周囲の子供を遠ざけたり、別室に移動させるなど安全対策を行います。

人だけでなく、壊れそうな物や、ガラス製品など割れると危険なもの、投げたり倒したりしそうな物があれば、それらの物品も安全な場所に移動させるなど対処を行いましょう。

不安やストレスの原因を取り除く

自傷行為を行った際に理由となった物事がはっきりしている場合には、その原因を取り除くきましょう。

たとえば放課後等デイサービス内に有ったおもちゃの音がうるさくて自傷行為に繋がった場合には、そのおもちゃの音を消したりおもちゃ自体を隠すなどです。

原因を取り除くことで、子供本人の不安が解消されるほか、次回からの自傷行為の軽減にも繋がります。

自傷行為が起こった際に原因が分からない場合には、そのときの本人の様子や周囲の環境、自傷行為以前にはどのような事があったのかなどを記録しておくことで、予防と対策に繋がる事も有ります。

自傷行為は発生してからでは対応するのが難しくなります。まずは、自傷行為が起こらないように予防する事が重要になります。

ストレス時の対処方法を教える

子供本人がストレスを感じた際の対処方法を教えるのも方法のひとつです。

自傷行為は子供がストレスや不安を感じた際に、自分では対処のやり方が分からないため、パニック状態となることで発生してしまいます。

子供がストレスを感じたら、その場から離れてクールダウンできるスペースに移動する事や、嫌いな音が聞こえたらイヤーマフを付ける、周囲の人に絵カードやサインなどで助けを求めるなどの対処方法を教えてあげましょう。

過剰な反応をしない

自傷行為が発生してしまった際は、パニック状態であるため、周囲の人が止めようとしても余計に興奮して逆効果になることも有ります。

まずは本人と周囲の安全を確保し、ある程度落ち着くまで見守ります。本人がある程度落ち着いたところで、クールダウンできる別室に連れて行ったり、怪我の対処などを行いましょう。

また、周囲に人が集まってしまうと、それに対して興奮してしまうこともあるので、安全を図る意味でも、自傷行為を行ってしまった子の対応は最小限の人数で行いましょう。

クールダウンを行う

自傷行為で興奮してしまった際には、クールダウンして落ち着いてもらうことが重要です。

クールダウンを行う際には、個室や別室に移動してもらったり、パーティションで区切った静かな区画などに移動させましょう。

クールダウン用の部屋を用意できない場合には、被って潜り込める毛布を用意したり、人が入れるぐらいの大きな段ボール箱に入るだけでも落ち着けることがあります。

代用品を使う

自傷行為として自分の手などをかんでしまう場合には、噛ませる用のハンドタオルを用意したり、赤ちゃん用の歯がためツールなど使い、噛むという行為を行わせることで自分を傷つけずにストレスが発散できる場合があります。

自分を抓ったりしてしまう場合には、抓っても良いゴムボール等を用意したり、自分を叩いてしまう子には布団などを叩いてもらう事でストレスを発散してもらいます。

別の刺激を与える

刺激を得るために自傷行為を行ってしまう場合には、別の刺激を与えるという方法もあります。

刺激を得るために頭を叩いてしまう場合には、少し強めに頭のマッサージなどを行うと比較的スムーズに落ち着くことがあります。

手などをかんでしまう場合には、こちらから手を揉んだり、強めに握手をするなどの刺激を与えることで自傷行為の代替となる事もあります。

保護具を用いる

頭を地面や床に打ち付けたり、極度に頭や顔を叩いてしまう場合には、ヘッドギアをつけるなどの対処方法があります。実際に自傷行為が出た際に、タンコブになるほど頭を打ち付ける子や、アザが出来るほど顔を叩く子で自傷行為軽減のため、気持ちが不安定になってきたらヘッドギアをつけてもらう事もあります。

自分を強く叩いたり、引っ掻いてしまう子には、手袋をつけて自分の体を傷つけないように対処する事もあります。

なお、手袋などを付けて行動を制限する場合には身体拘束となる事もあるので、事前に本人や保護者に同意、、使用する際の状況判断(切迫性・非代替性・一時性)、使用後の報告と使用記録を残す必要があります。

まとめ

子供が自傷行為をするのには様々な理由や原因があります。まずは本人の状況や気持ちになり、原因を調べて対処してあげましょう。

原因が分かる場合には原因となるものを取り除いたり、ストレスの発散方法や、自傷行為以外の対処方法を教えてあげることも重要です。

ストレスや不安などで自傷行為をしてしまう場合、そのときの状態だけでなく過去の出来事などが原因の場合もあります。学校後の利用の際には、先生に怒られた事や、学校でのイライラを引きずってくることがあるので、学校の先生からの引継ぎをしっかり行うことが大切です。